『ロビイングのバイブル』 株式会社ベクトルパブリックアフェアーズ事業部、藤井敏彦、岩本隆著

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ロビイングのバイブル

『ロビイングのバイブル』

著者
ベクトルパブリックアフェアーズ事業部 [著]/藤井 敏彦 [著]/岩本 隆 [著]
出版社
プレジデント社
ISBN
9784833450690
発売日
2016/08/09
価格
1,674円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『ロビイングのバイブル』 株式会社ベクトルパブリックアフェアーズ事業部、藤井敏彦、岩本隆著

[レビュアー] 柳川範之(経済学者・東京大学教授)

日本企業も活動を

 ロビイングと聞くと、何となく後ろ暗い、企業と政治家が裏で結託をして、自社に都合の良いように政策を誘導する動きだと考える人は少なくないだろう。そして、その際には、場合によっては不透明な形でお金が動く。そんなイメージを抱く人も多い。

 しかし、この本では、世界のロビイング活動が、日本人がもっているそんなイメージから大きくかけ離れつつあることを明らかにする。

 ここで述べられているロビイングとは、企業が、自分たちの主張がどれだけ公共性のあるものか、どれだけ社会をよくするかを、説得力をもって主張していくものであり、閉鎖的で不透明な活動ではなく、もっとオープンな形で行われるものである。

 その際に働きかけるのは、必ずしも政治家に対してだけとは限らない、消費者や社会全般に対する働きかけも含まれる。ある意味では、企業のコミュニケーション力が試されるものだとして、ロビイング活動ができる会社になるための、具体的なステップも紹介されている。

 考えるべき、より大きなメッセージは、このようなロビイング活動を日本企業も積極的に行っていかないと、世界のルール形成の場から取り残され、どんなに品質の良いものをつくっても国際的な競争に負けてしまうという主張だ。国際的なロビイング活動の良し悪(あ)しが、日本企業および日本経済の命運を左右する。

 例えば、どれだけ優れた製品を作っても、国際的な規格が、その製品と異なるものになってしまったら、世界的に販売することができなくなってしまう。消費者に良い製品だと選んでもらう前に、いわば戦わずして負けてしまうのだ。

 このような事態を避けるためにも、国際的なルール形成の場に積極的なロビイング活動を行い、自社にそして自国に不利にならないような活動を行う必要があるとの警告は、重く受け止めるべきだろう。

 ◇ふじい・としひこ=経済産業研究所コンサルティングフェロー ◇いわもと・たかし=慶応大特任教授

 プレジデント社 1550円

読売新聞
2016年10月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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