『伊勢と出雲 韓神(からかみ)と鉄』 岡谷公二著

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伊勢と出雲

『伊勢と出雲』

著者
岡谷 公二 [著]
出版社
平凡社
ジャンル
哲学・宗教・心理学/宗教
ISBN
9784582858211
発売日
2016/08/16
価格
842円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『伊勢と出雲 韓神(からかみ)と鉄』 岡谷公二著

[レビュアー] 月本昭男(旧約聖書学者・上智大特任教授)

 伊勢周辺には新羅系の渡来人を示す地名が点在し、古墳をはじめとする遺跡から韓式土器が数多く出土する。当の伊勢神宮の内宮と外宮の間には韓神山(からかみやま)と呼ばれる小山があり、韓神社があった。江戸中期の書によれば、そこは内宮の禰宜(ねぎ)、荒木田一族の祖墳であり、山宮祭の祭場であったという。いったい、なぜ伊勢と韓神が結びつくのか。

 この謎を解き明かすために著者は、古典を紐解(ひもと)き、民俗学や考古学の研究成果に目配りし、伊勢とその周辺の神社を訪ねてまわる。そして、伊勢神宮自体が古代の造船と製鉄の技術をもたらした渡来人と深く関わることをつきとめてゆく。そもそも伊勢の内宮を流れる五十鈴川のスズは褐鉄鉱のことであった。

 著者はその渡来人たちの足跡をさらに丹波から出雲へと遡ってゆく。そこは渡来人がいちはやく造船や製鉄技術をもたらした地であった。その出雲には、韓竈(からかま)神社や韓国(からくに)神社が残り、渡来人たちが祀(まつ)っていた韓神の残影をいまにとどめる。

 秋の夜長に、古代文化史に関わる神社研究の醍醐(だいご)味を味わえる手ごろな一冊である。

 平凡社新書 780円

読売新聞
2016年10月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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