髙崎順子 子供の増える国、フランスの発想法

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フランスはどう少子化を克服したか

『フランスはどう少子化を克服したか』

著者
髙崎 順子 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
社会科学/教育
ISBN
9784106106897
発売日
2016/10/15
価格
799円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

髙崎順子 子供の増える国、フランスの発想法

[レビュアー] 髙崎順子

 ピカピカの遊具、園内で手作りするごはん。保育士は園児をこまめに着替えさせて清潔に保ち、月に一度は季節の行事や遠足を催す。日本の保育園を数件見学した際、その設備と充実した保育内容に感銘を受けた。

 一方、私が2人の子供を預けているパリ郊外の保育園では、給食はセンターでつくったものがほとんど。パリ市内では園庭すらない保育園が多く、外遊びも毎日ではない。着替えは汚れがよっぽど不快な状態(びしょ濡れなど)でなければさせず、Tシャツに粘土や絵の具をつけたまま帰ってくる。園の行事は年に2回、クリスマス会と学年末のお祭りのみで、運動会やお遊戯会はない。まして入園式も卒園式もない。比べてみると、日本はずっと手厚い保育を行っているのだ。日本の保育園は、素晴らしい……!

 それでも私には、そこに自分の子供を通わせることが、とてもハードルの高いことのように思えた。それは日本の保育園で一般的な、「毎日の持ち物表」の存在を知ったから。乳幼児の場合、〈名前を書いた紙オムツ5枚、ビニール袋2枚、口拭きタオルとエプロン各2枚ずつ、着替え1枚ずつ、記入済みの連絡帳……〉。これらを毎日用意して持参し、降園時には使用済みオムツがビニール袋に入れて返却されるという。一方のフランスは、毎日手ぶらで通園し、手ぶらで帰宅する。手厚い保育を行う日本の園は、親に求められるものもまた、フランスよりずっと多いのだ。

 フルタイムで勤務した後、悪臭を放つオムツを持ち帰り、朝晩と子供の世話をして、翌朝また5枚のオムツに記名する(返却時の混同防止のため)。そんな自分の姿を想像して、私には無理だ! と、泣きそうな気持ちになったのを覚えている。そしてそこから考えた。どうして保育園のあり方がこんなに違うのだろう。合計特殊出生率ではフランスは1・98、日本は1・42(2014年、OECDデータ)と、大きな開きがある。手厚い保育を行う日本で、なぜ子供が増えないのか。逆にフランスではなぜ、子供が増え続けるのか。

『フランスはどう少子化を克服したか』は、そんな素朴な疑問に端を発している。そこから現地の保育関係者に会い、子育てをめぐる諸制度を調べていくと、人間的で合理的、かつ現実的な「フランス式」が見えてきた。保育だけではない。父親の育児参加、無痛分娩、就学前教育と、子持ち家庭が経験する様々な局面に、国を挙げた子育て支援策が行き届いている。そしてそこには、日本とは全く異なる発想が採用されていた。保育が日本ほど手厚くなくとも、子供が増えていく発想法が。

 少子化の危機に悩む日本に今必要なのは、まさにその「異なる発想」であることを、本書でご理解いただけると信じている。

新潮社 波
2016年11月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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