『ホッピー文化論』 ホッピー文化研究会編

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ホッピー文化論

『ホッピー文化論』

著者
ホッピー文化研究会 [著]/碧海 寿広 [著]
出版社
ハーベスト社
ISBN
9784863390799
発売日
2016/08/30
価格
1,296円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『ホッピー文化論』 ホッピー文化研究会編

[レビュアー] 奈良岡聰智(政治史学者・京大教授)

庶民の酒を爽快に分析

 戦後長らく「国民酒」とも言うべき地位を占めてきたビールの消費量が減少している。高齢化、デフレ、健康ブーム、女性の飲酒人口の増加など、原因は多様のようだ。代わって2000年代に入る頃から発泡酒や焼酎がよく飲まれるようになった。東京下町の安酒の代名詞であったホッピーも、近年の昭和ブームと相俟(あいま)って、ちょっとしたブームになっているという。

 本書はホッピーを様々な角度から分析している。「B級グルメ」論はよく目にするが、「B級アルコール」(失礼!)とここまで真剣に向き合い、学術的な分析を加えた著作は、寡聞にして知らない。戦後の世相の変化や現代の社会状況が鮮やかに析出されており、実に面白い。

 そもそもホッピーが誕生したのは、終戦直後の東京。粗悪なアルコールが多数出回る中、焼酎で割ることで、安くて手軽に酔える飲み物として、ホッピーは歓迎された。進駐軍の捨てたビール瓶を再利用して販売していたというから、時代が偲(しの)ばれる。その後、1970年代後半に一時的ブームを迎えたが、庶民向けの「路地裏の酒」というイメージを払拭できないまま、長期の不振が続いた。しかし近年、品質向上とブランド化の努力を重ね、見事メジャー化に成功した。今ではこじゃれたレストランに置かれ、若者や女性も飲むようになっている。定番の焼酎割りの他、色々なアルコールで割って多様な楽しみ方ができるのも、人気の秘訣(ひけつ)のようだ。

 ホッピーは全国ブランド化しているとは言えず、関西や地方では手軽に飲むことができない。また、正直言えば、根っからのビール党である私には、ホッピーは少々物足りないところもある。しかし、プリン体ゼロ、低糖質で、飲みやすいのは非常に魅力的だし、そこはかとないノスタルジーを感じながらこの飲み物を口にするのは大変楽しい。今晩はビールよりもホッピーにしよう。そう思わせること請け合いの、爽快な読み物である。

 ◇ほっぴーぶんかけんきゅうかい=会員は30代の酒好きな研究者6人。専門は宗教学や社会人類学など。

 ハーベスト社 1200円

読売新聞
2016年10月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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