『帝国ホテルの考え方』 犬丸徹郎著

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帝国ホテルの考え方 本物のサービスとは何か

『帝国ホテルの考え方 本物のサービスとは何か』

著者
犬丸 徹郎 [著]
出版社
講談社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784062201582
発売日
2016/08/23
価格
1,404円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『帝国ホテルの考え方』 犬丸徹郎著

[レビュアー] 安藤宏(国文学者・東京大教授)

 親子三代にわたって帝国ホテルに勤め、副総支配人の職にあった著者が、若き日にヨーロッパで修行した思い出などもまじえ、蘊蓄(うんちく)あふれるホテル論を展開する。

 日本では客を平等に扱い、サービスを均質化することにもっぱら努めるが、欧米の一流ホテルではもてなす側が客の善し悪(あ)しを選別し、よい客に独自のサービスを提供する。利用者に、自分だけが特別に扱われている、という気持ちを抱かせるのがポイントなのだという。一流の従業員(ホテリエ)は、それぞれ生涯にわたる顧客(マイ・ゲスト)を持つ職能集団でもある。プライベートな日常でも常に生活のディテールにこだわりを持ち、文化人と家族ぐるみの交際をする中でネットワークを構築していく。著者も例外ではない。白洲次郎、生沢朗、松本弘子、森英恵、桑田佳祐夫妻など、登場するメンバーは実にきらびやかだ。

 セレブは鼻につく、と感じる読者はおそらくこの本を読まないほうがよいかもしれない。現代日本に欧州の階層文化を実現することがいかにして可能なのか、しみじみ考えさせられる一書である。

 講談社 1300円

読売新聞
2016年10月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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