『都市と地方をかきまぜる』 高橋博之著

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都市と地方をかきまぜる

『都市と地方をかきまぜる』

著者
高橋博之 [著]
出版社
光文社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784334039363
発売日
2016/08/17
価格
799円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『都市と地方をかきまぜる』 高橋博之著

[レビュアー] 稲泉連(ノンフィクションライター)

 「東北食べる通信」という情報誌がある。三陸沿岸や福島県の農家を訪れると、何年か前からよく話題に上るようになった。現在は全国34地域に広がっている「食べ物付き」の限定誌で、年々、存在感が増している。

 一次産業の現場を取材し、小冊子に生産物を付けて読者に届ける。元岩手県会議員で同誌を創刊した著者は、その刺激的な発想の背景にある哲学を本書で熱く綴(つづ)る。

 三陸の漁師や福島の農家のもとに通い、都市では若者と車座になっての勉強会。「地方」と「都市」の行き詰まりと分断をそれぞれ胸に刻んだ上で、ならばいっそ双方をかき混ぜてしまえばいい――と喝破する。その経緯を読むと、生産者の物語や価値観を都市に対して「見える化」するという「食べる通信」が、現在の消費のあり方を根底から変えていこうとする実践的な試みであることが分かる。

 何より行動によって形作られた思想であるところが力強い。成熟した消費社会の先端からいま、どのような動きが生まれようとしているか。その胎動が確かに感じられる地方創生論だ。

 光文社新書 740円

読売新聞
2016年10月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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