『幕末外交儀礼の研究』 佐野真由子著

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幕末外交儀礼の研究-欧米外交官たちの将軍拝謁

『幕末外交儀礼の研究-欧米外交官たちの将軍拝謁』

著者
佐野真由子 [著]
出版社
思文閣出版
ISBN
9784784218509
発売日
2016/07/27
価格
5,400円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『幕末外交儀礼の研究』 佐野真由子著

[レビュアー] 奈良岡聰智(政治史学者・京大教授)

 現在、各国から派遣される新任の駐日大使は、必ず信任状を持参し、天皇に捧呈(ほうてい)する。捧呈式に際しては、大使館から皇居への移動のために、煌(きら)びやかな儀装馬車が用いられるのが通例である。天皇、大使はもちろんのこと、侍立する外相や職員も全て正礼装を着用し、式は厳かに行われる。信任状捧呈式は、国家の公的関係を象徴的に確認するきわめて重要な儀式である。

 このような儀式は、いつから始まったのか。明治政府の成立以降だと考えられがちであるが、著者は、幕末の将軍と各国外交官の拝謁に起源があると説く。1857年に米国の初代総領事ハリスが将軍家定に拝謁したのがその嚆矢(こうし)で、以後幕府は、試行錯誤を重ねながら欧米流の外交儀礼を学んでいった。朝鮮通信使をはじめとする近世の対外関係で蓄積されたノウハウが活用されたというから面白い。

 幕末外交、武家儀礼、いずれに関しても研究は多数存在するが、幕末の外交儀礼というテーマは従来看過されてきた。一見地味な儀礼研究から、近世から現代までの日本外交を通貫する壮大なストーリーが浮かび上がる。

 思文閣出版 5000円

読売新聞
2016年10月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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