『家族のゆくえは金しだい』 信田さよ子著

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家族のゆくえは金しだい

『家族のゆくえは金しだい』

著者
信田 さよ子 [著]
出版社
春秋社
ジャンル
哲学・宗教・心理学/心理(学)
ISBN
9784393366417
発売日
2016/07/15
価格
1,836円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『家族のゆくえは金しだい』 信田さよ子著

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

 身も蓋(ふた)もないタイトルである。拝金主義っぽいと、一瞥(いちべつ)して抵抗を覚える方もいるかもしれないが、本書に限ってはそれは誤解だ。

 著者は一九四六年生まれ。経験豊かな臨床心理士でありカウンセラーだ。本書で紹介されている多くの事例は、ありのままの現場からの声である。その声が「お金という要素を抜きにしては、現代社会に存在する家族の問題を解決することはできない」と訴えている。「愛と絆」だけでは、依存症やDVや虐待やコミュニケーション障害に苦しむ家族と、その個々の構成員を救うことは難しいのだ。

 これはけっして家族の「愛と絆」の価値を貶(おとし)める主張ではない。だってそもそも愛は万能ではないし、愛とお金は対立する事項ではないのだから。著者は一貫して、家族間のこじれを緩和し個々の幸せを実現してゆくためには、今ここにある社会システムに沿った、家族間での「お金に対するルール形成」が必要だと説いている。そのためにはまず、親が子に与え、子が親に報いるべき「無償の愛」という神話から、もうそろそろ自由になろう、と。(春秋社、1700円)

読売新聞
2016年11月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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