【今週の労務書】『「非正規労働」を考える 戦後労働史の視角から』

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

【今週の労務書】『「非正規労働」を考える 戦後労働史の視角から』

[レビュアー] 労働新聞社

「人材選別機能」で合理的

「非正規」という言葉をこの国から一掃する――総理の高らかな宣言は記憶に新しいが、そうした綺麗事で現場は動かず、「市場経済を前提とする限り、非正規労働者の存在や双方の併存には合理的な根拠がある」と訴えるのが本書。

 ほぼ似た仕事で正社員並みの働きなのに、不当に安い賃金の非正規労働者が増えているとする通説に対し、希少な現場データや著者お得意の聞き取りを通じ、非正規という「人材選別機能」の合理性を指摘する。仕事への適性が認められ、晴れて正社員となる”見極めの期間”は日本でも古くから存在するとし、そうした機能を省みないのは誤りとみる。

 ゼロにはならない弊害を減らす道しかないとの論考を味わいたい。

 (小池和男著、名古屋大学出版会刊、TEL052-781-5027、3200円+税)

労働新聞
2016年10月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

労働新聞社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク