『「文藝」戦後文学史』 佐久間文子著

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「文藝」戦後文学史

『「文藝」戦後文学史』

著者
佐久間 文子 [著]
出版社
河出書房新社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784309024974
発売日
2016/09/23
価格
2,592円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『「文藝」戦後文学史』 佐久間文子著

[レビュアー] 松山巖(評論家・作家)

 昭和八年、改造社が創刊した『文藝(ぶんげい)』は言論統制で改造社解散後、河出書房(現河出書房新社)が引き継ぎ戦時中も刊行し八十年余の歴史がある。著者は『文藝』全巻を読み、同時期の他の文芸誌と照合し、戦後文学に『文藝』が果たした役割を綴(つづ)る。

 通常、文芸誌は同じ出版社が純文学の雑誌とエンターテインメントの雑誌二誌を出す。例えば新潮社なら純文学は『新潮』に、エンターテインメントは『小説新潮』に。だが『文藝』は双方を掲載。

 それだけ『文藝』は大手出版社の雑誌ではなく、会社は二度も倒産。そこでミステリーや詩も特集し、戦後文学の新しい動きに敏感に反応せざるを得ず、編集長の考えや手腕が強く出る。そこが『文藝』のユニークさだ。だから他の文芸誌では掲載しそうもない『サラダ記念日』や『なんとなく、クリスタル』を掲載し、ベストセラーも生んだ歴史などを著者は詳述する。

 と同時に、著者は後書きで『文藝』掲載の時流に外れた小説を読み、却(かえ)って強い印象を受けたと述べる。この幅広さこそ今日の文芸誌が改めて考えるべき役割ではないか。

 河出書房新社 2400円

読売新聞
2016年11月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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