「生きぬく智恵を『論語』の名言から学ぶ」高畑常信著
[レビュアー] 産経新聞社
「論語に孔子の本音がすべて語られているわけではない」と言い切る本は初めてだろう。筆者は、論語を「人生を楽しく生きるための処世訓」とし、孔子の本音を読み取らなければならないという。
たとえば子路篇の「父は子の為に隠し、子は父の為に隠す」という言葉。悪事もお互いかばうのが親子で、一家の平和にはそれが良い。激動の世を生きるには杓子(しゃくし)定規な正義でなく、頼れる人を大切に、周囲をよく見て決断する智恵(ちえ)を身に付けろ、というわけだ。
人間性豊かな孔子の姿が分かりやすく語られ、論語の名言が新たな輝きをもって心に入ってくる。(木耳社・1500円+税)