中西敦士・インタビュー 人類を救う夢のデバイス/『10分後にうんこが出ます―排泄予知デバイス開発物語―』

インタビュー

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10分後にうんこが出ます

『10分後にうんこが出ます』

著者
中西 敦士 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784103505310
発売日
2016/11/30
価格
1,404円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

中西敦士・インタビュー 人類を救う夢のデバイス

――この本は、おしっこやうんこが出るまでの時間を予測して知らせる装置「DFree」の開発物語です。超文系の中西さんがハードウェアの開発チームを作っていく様子から、体を張った実験、そして危機一髪の資金調達まで、驚きに満ちた痛快なストーリーが描かれています。まずタイトルを見て、本当にそんなことが可能なのか、と多くの人が思うに違いありません。まずDFreeの仕組みを簡単に解説してもらえますか?

中西 はい。まずは下腹部にウェアラブルな超音波センサーをつけ、膀胱や大腸など体内の様子を計測します。これは「溜まっている様子や動き」を見るためです。その情報を無線通信でスマートフォンに送り、専用のアプリで分析して「何分後に出るか」を予測します。そして「一〇分後」や「三〇分後」など、利用者が望む時間に合わせてお知らせします。

――そもそもDFreeの開発を始めたきっかけは何だったのでしょうか?

中西 この本に詳しく書いたじゃないですか!

――そうでした。微に入り細を穿って……。

中西 大企業の静粛な会議室でその質問を受けたことも何度もありますが、スーツにネクタイでその話をする姿を想像してください。多くの人は平静を装って聞いてくれますが、腹の中まではわかりません。うんこが出るまでの時間は予測できても、笑いが漏れるまでの時間は予測できません。

――場所はアメリカでしたね。異国でうんこを漏らすって、得がたい体験ですね。

中西 えっ、得がたい……結局言わせたいんですね。はいはい、僕がうんこを漏らしたのは忘れもしない二〇一三年九月。起業を目指してカリフォルニア大学バークレー校に留学していた時でした。希望に満ちた二九歳のある日、僕はバークレーの道端で急な便意に負けて大量に漏らしたんです。

――「プチ漏れ」程度のご披露ですが、本書では一章まるまる「大惨事」の迫真のドキュメントに割かれているのでそちらを読んでもらいましょう。

中西 人間の尊厳に関わるこの大惨事が、僕の人生を変えました。これ以上の犠牲者を出さない方法を考え抜いた結果、排泄予知をするDFreeにたどり着いたんです。

――ウンチをチャンスに変えた、と。開発メンバーは学生時代からの知り合いが多いですね。奇跡的な偶然や運命的な出会いも重なっています。

中西 FacebookなどのSNSも使い、とにかく知り合いに声をかけて回りました。後輩の後輩の友達の友達が実験に協力してくれたり、合コンで名刺交換しただけの弁理士さんに特許出願をお願いしたりしています。ただ、中学高校時代の同級生で、僕とは違う理系に進んだ正森良輔がいなければDFreeは完成しなかったと思います。

――頻繁に登場する正森さんですね。なぜこの事業を手伝ったのでしょうか?

正森 どうも、正森です。同級生だったこともありますが、特許や文献を調べても類似のものがまったく出てこなかったことにも興味を惹かれました。専門家も答えを出せていないものは非常に面白いし社会的意義もある。最初の半年間、開発チームはみんな無給でしたが、それでも人が集まったのは中西の人望ですね。

――素朴な疑問ですが、排泄予知にはどんなメリットがありますか?

中西 人間は生きている限り、うんこやおしっこと縁を切れません。健康な人でも突然の尿意や便意に襲われて焦った経験があるはずです。もし、「何分後に出るか」がわかれば、余裕を持ってトイレを探せます。また、尿意や便意をうまく伝えられない人や、トイレに行くまでに時間がかかる人も排泄ケアが可能になる。全世界で数百万人がおむつを外せるかもしれません。DFreeは健康な人に安心感を与えるだけでなく、介護現場を劇的に変えると僕は確信しています。

――出荷前の反響はいかがですか?

中西 すでに二〇万床分以上の問い合わせが世界中から殺到しています。フランスに本部がある世界最大の介護グループとも交渉中です。

――うんこを漏らした時には夢想だにしなかったことですね。

中西 しかも、その体験を本に書くなど、まったく予知できませんでした。

新潮社 波
2016年12月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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