『KorLa―コルラ―』 竹沢うるま著

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Kor La -コルラ-

『Kor La -コルラ-』

著者
竹沢 うるま [著]
出版社
小学館
ジャンル
芸術・生活/絵画・彫刻
ISBN
9784096822319
発売日
2016/09/30
価格
3,672円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『KorLa―コルラ―』 竹沢うるま著

[レビュアー] 出口治明(ライフネット生命保険会長)

 竹沢うるまという写真家がしばらく前から気になっていた。本書は待望の新作品集で、コルラとは、チベットの仏教徒が信仰の対象を時計回りに巡礼することを指す言葉だという。

 敢(あ)えてチベット自治区には入らず、約2年をかけて周囲のチベット仏教圏(インド、ネパールや中国四川省など)を旅した記録だ。厳冬期に凍れる川を、荷物を担いで歩く人々。老いた女性の微笑(ほほえ)みや、正面をみつめる4人の子どもの表情はまるで生き仏のようだ。世界の真理の形を表す砂曼陀羅(まんだら)。寂れた寺院で偶然に見つけた、120年前にチベットに潜入した河口慧海の像。終わりなきチベット仏教の仮面舞踏。

 吹雪と闇夜に明りを灯(とも)す、小さな炎の大地に暮らす名もなき人々の圧倒的な存在感が迫ってくる。「旅は生きるという作業」だという写真家に惹(ひ)かれる理由が少しは分かった気になった。

 小学館 3400円

読売新聞
2016年11月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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