『はじめての短歌』穂村弘著
[レビュアー] 産経新聞社
効率を重視するビジネスマンを対象にした短歌講座の講義録である。著者は受講者に、効率的でないことに別の大きな価値のあることを、短歌を添削して改悪するという方法で伝える。こんな具合。
《空き巣でも入ったのかと思うほど私の部屋はそういう状態》→《空き巣でも入ったのかと思うほど私の部屋は散らかっている》
ビジネスの世界では《そういう状態》という曖昧な表現は許されないが、短歌としてみれば、前者が圧倒的にすぐれている。食べていくための言葉も大切だが、人生を豊かにするには、生きるための言葉こそ必要だと著者は訴える。(河出文庫・520円+税)