『インフェルノ(上)』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
人口問題解決の恐るべき方策とは?
[レビュアー] 図書新聞
ハーヴァード大学のロバート・ラングドン教授が、宗教象徴学の知識を駆使して、数々の謎を解き明かすシリーズ第四作。本作のテーマは、ダンテの『神曲』。生化学者ゾブリストが、人口問題を解決すべく究極的な行動に出る。その恐るべき方策に、ラングドンは果敢に立ち向かうのだが……。読者の知的好奇心をこれでもかと言わんばかりに刺激する物語、地と図が反転する展開、どこを取っても一級品。上から目線でエンターテインメントを否定することはたやすい。しかし、ダン・ブラウン作品の面白さに抗うことは難しい。このたやすさと難しさの間に、小説の未来があるような気がする。結末は絶望的なまでに深刻。現在公開中の映画では、どう描かれているのか。併せて楽しみたい。全三巻。(越前敏弥訳、2・25刊、三〇六頁・本体六八〇円・角川文庫)