<東北の本棚>緊急時の心構え考える

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熊!に出会った襲われた

『熊!に出会った襲われた』

著者
つり人社書籍編集部 [編集]
出版社
つり人社
ジャンル
芸術・生活/体育・スポーツ
ISBN
9784864470933
発売日
2016/08/16
価格
1,222円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

<東北の本棚>緊急時の心構え考える

[レビュアー] 河北新報

 今年5月以降、鹿角市の山林でタケノコ採りをしていた男女4人が相次いでクマに襲われ、死亡する事故が起きた。奥山にすむクマが人里に出没する例も数多く、「不幸な出合い」はひとごとではない。本書はクマと遭遇した釣り人や登山家らに聞き取りと寄稿を依頼。緊急時の心構えや、山で異変が起きた原因を考える。
 東北などに生息するツキノワグマに遭遇したものの、難を逃れた16人と、襲われてけがをした4人の体験談を収録した。
 クマよけには一般的に、人の存在を知らせる鈴や笛、撃退用のスプレーが使われる。一定の効果はありそうだが、過信は禁物だ。釣り愛好家の市田郁一さんは山形県や秋田県へ渓流釣りに行き、鈴を鳴らしたにもかかわらず3年連続で遭遇した。「どんな装備であれ、遭う時は遭うようだ」と警告を発する。
 早坂秀敏さんは岩手県内の川で倒されて顔にかみつかれ、右目を失う大けがをした。このクマは下流で別の釣り人を襲ってけがをさせていた。ツキノワグマは一般的に臆病な動物だと言われるが、人を襲ってしまった後は気が立っており、凶暴性が増すらしい。100%安全な対策はないことが分かる。
 山の異変に関しては、山岳ガイド高桑信一さんの論考が印象深い。奥山にすむ獣と人を分ける役割を果たしていた里山が荒廃し、「原生の森に等しい」状況が生まれたと主張。緩衝地帯としての里山を再形成する必要性を訴える。北秋田市のクマ動物園長、小松武志さんへの取材や、北海道に生息するヒグマとの遭遇記も掲載する。
 つり人社1200円=03(3294)0781。

河北新報
2016年11月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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