忿怒の円空仏と微笑の木喰仏
[レビュアー] 図書新聞
美濃の山中深く謎を含んだ出生の円空と甲斐の山々に囲まれた寒村に生を受けた木喰(行道)。前者は厳しい修験者として、後者は庶民の遊行宗教者として、全国を旅しながら多くの造形物を残した。近年多くの鑑賞者や研究者を生み出している。両者の共通点と相違点、とりわけ忿怒相の円空仏、微笑相の木喰仏。出自や時代の違いを越えて、その底深くで願った思いとは何か。
その研究の出発点ともなった五来重の『微笑佛――木喰の境涯』(一九六六年刊)と『円空佛――境涯と作品』(一九六八年刊)の二書を合わせて装いも新たに刊行された。もはや日本文化の基層を知る上で欠かせぬ存在となった鉈彫り仏像の実相をこの一冊で理解することが出来ると共に、五来民俗学の根幹に触れることが出来る書である。(11・25刊、三二〇頁・本体一〇八〇円・角川ソフィア文庫)