『自分の時間を取り戻そう』 “生産性”を高めるには?

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「生産性」なんて、と思っている人にこそ

[レビュアー] 田中大輔(某社書店営業)

 残業が常態化し、プライベートの時間がほとんどとれないという人も多いのではないだろうか? 生産性を上げることでそれを解消し、自分の時間を取り戻して、自分の人生を生きようというのが、今回紹介する『自分の時間を取り戻そう』のテーマである。著者は社会派ブロガーのちきりん。シリーズ累計23万部を超えるベストセラー『自分のアタマで考えよう』、『マーケット感覚を身につけよう』(ともにダイヤモンド社)の著者だ。このシリーズでは「今後の社会を生きていくために、そして人生を楽しむために、私たち全員が身につけるべき根幹の能力とはなになのか」をテーマとしている。

 この本で強調されている生産性という言葉は2017年のキーワードになるかもしれない。世界は高生産性社会へとシフトしつつあるからだ。空き部屋や空き家を活用するAirbnb、空き時間を活用するUberといったサービスなど、見過ごされていた資源がどんどん有効活用されるようになっている。「『生産性が上がる』とは、あらゆる資源の活用度合いが高まること、あらゆる資源が、今までより有効に使われ始めることを意味しています」と著者はいう。生産性という言葉は一般的に、とても狭い意味で理解されている。工場で働いているわけではないから自分には関係ない、と思う人もいるだろう。しかし生産性とは生活のあらゆる場面において、その成果を最大化するための鍵となる概念なのである。

 ではどうやったら生産性を高められるのだろうか?「『すべてをやる必要はない!』と自分に断言する」。そうすることで仕事や人生における優先順位の高いことだけに取り組める。次に「まず『やめる』」。やらないと決めてから、やらなくていい方法を考えるのだ。そして「時間の家計簿をつける」。自分がどんなことに時間を使っているのかを把握し、生産性の低いことや、やめるべきことをみつける。

 生産性を意識すると人生の希少な資源である時間とお金を、自分が本当に手に入れたいものだけに活用できるようになるのだ。自分の人生を生きるためにも生産性の概念をこの本から学びたい。

新潮社 週刊新潮
2017年1月19日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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