大切なのは「アホになる」こと? 感情的にならずにすむ8つのポイント

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感情的にならない気持ちの整理術 ハンディ版

『感情的にならない気持ちの整理術 ハンディ版』

著者
和田秀樹 [著]
出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン
ISBN
9784799320297
発売日
2017/01/26
価格
1,430円(税込)

書籍情報:openBD

大切なのは「アホになる」こと? 感情的にならずにすむ8つのポイント

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

感情的にならない気持ちの整理術 ハンディ版』(和田秀樹著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、多くの著作を持つ精神科医。本書は、コンビニエンスストア限定で発売されベストセラーとなったムック『図解 感情的にならない気持ちの整理術』を加筆、再編集したものです。

著者は最近、感情をコントロールできず、不機嫌になっている人が多くなっていると指摘しています。その証拠に、「感情を整える」「感情をコントロールする」「感情的にならない」テクニックを扱った書籍やセミナーが増えているとも。先日も関連書籍を取り上げた「アンガーマネジメント」のブームも、そのひとつなのかもしれません。

ただ、著者自身もどちらかというと感情的な人間なのだそうです。ただし感情に振り回されて失敗することは少なく、その秘訣として次の3つを挙げています。

1つめは、「自分が他の人よりせっかちである」と自覚していることです。自分の性格の偏りを認めることで、怒りをセーブすることができました。
2つめは、自分の考えを絶対視せず、他の可能性も認めることです。正しさにこだわるのをやめればストレスがなくなります。
3つめは、結果を重視することです。結果的に自分の得になればいい。そう思っているので、ときには人に頭を下げることも厭わないのです。
(「はじめに」より)

つまり、感情をなくすことが大切だというわけではないということなのでしょう。人間ですから、誰でも不機嫌になることはあるもの。あくまでもポイントは、自分の感情に流されないようにすること。こうした考え方を軸として、第2章「感情的にならない考え方」から「感情的にならずにすむ考え方、8つのポイント」を見てみましょう。

1. まずは自分の性格の”偏り”に気づく

いつも他人の行動が目についてしまい、イライラしている人がいます。でも、たいていの人は、それほど目くじらを立てないもので、「怒っているのはその人だけ」というケースも少なくありません。つまり、不機嫌になるのは他人のルーズな性格のせいではなく、自分が極度に厳しい性格だから。いわば性格が偏っているからこそ、相手の行動がいちいち気になるということです。

しかし、常に不機嫌な人は、自分の性格に偏りがあることに気づいていないと著者は指摘します。でも「自分の性格は正常で、相手こそ偏っていて非常識だ」と考えている限り、いつまでも不機嫌な感情から抜け出せなくて当然。そこで、自分の性格の偏りを認めることが大切だというわけです。

そんな人でも、普通よりも過敏に反応してしまう分野を1つや2つは持っているもの。だとすれば、「自分は人よりも時間に厳しい人間なんだな」などと素直に認めてしまえば、感情的にならずに、他人の行動も冷静に受け止めることができるということです。(68ページより)

2. ハードルは「ほどほどの高さ」に設定する

仕事でも趣味でも人間関係でも、すべてが完璧にうまくいくものなどないはず。ところが完璧主義の人は、なにをやるにも100%の達成を目的にしてしまいがち。手抜きや妥協は一切許さず、やるからには全力を注いでしまう。すると、80%の完成度でも、納得できずに不満を抱えてしまうものです。

「20%のできなかった部分」に意識が向かうため、挫折感を味わうことになるということです。なにかに取り組むたびに落ち込むので、当然不機嫌になります。そう考えると、人を不機嫌にさせる要素のひとつが「完璧主義」だといえると著者。そんな状態から抜け出すには、とにかく完璧を目指すのをやめること。100%を目指すのではなく、80%も達成できれば十分だと考えるわけです。

どのラインをクリアすれば80%の合格点といえるのかは、経験で判断できるはず。「80%達成でも十分に合格点をクリアしているのだから、あとの20%はうまくいったら儲け物だ」と考えられる人は、イライラせずに毎日を過ごせるそうです。(72ページより)

3. 「NO」と言える勇気を持つ

社会生活を営むうえでは、誰しも多かれ少なかれ人間関係のしがらみを抱えて生きています。そして、それがもとで不機嫌な毎日を過ごしている人も少なくありません。だからこそ、「イヤなものはイヤ、と言えない」「波風を立てたくないばかりに、自分が損をしてでもその場を収めることを第一に考えてきた」というような人は、いますぐにでも方向を転換すべきだと著者は主張しています。ときには勇気を出して「NO」と言ってみればいいということ。

なぜなら、「NO」と言うのもれっきとしたコミュニケーションのひとつだから。相手がどんな立場であっても、納得できないことや我慢できないことがあれば、思っていることを素直に伝えてよいということです。

お互いに言いたいことを素直に伝えるのであれば、よほど相手がおかしな人間でない限り、人間関係にトラブルを残すことにはならないでしょう。ただし、イライラにまかせて相手を非難するようなことはするべからず。素直に感情を表明する行為と、感情的に相手を傷つける行為は別ものだということです。(76ページより)

4. 自分への”ご褒美”を設定する

苦手な人と会う、嫌いな上司と打ち合わせするなど、イヤなことがある日は気分が重くなりがち。ならばそんなときは、自分の気持ちを高揚させるような「ご褒美」をつくっておけば平常心を保てるものだといいます。ちなみに著者が オススメしているのは、1週間に3つを目安に、自分自身へのご褒美を用意する方法。

ご褒美は、レストラン・ディナーを予約したり、映画の前売り券を買っておくなど、「実現できる範囲で、気分が高揚する」バランスを考えるのがポイント。趣味の本を読む時間を空けておくなど、手軽にできる小さなことでもいいそうです。(80ページより)

5. 「自分を愛する気持ち」を持つ

心地よい毎日を過ごすためのいちばんのポイントは、「自分を愛する気持ちを持つ」ことだといいます。そんな気持ちは「自分はこのままでも大丈夫」という安心感につながるため、将来を過剰に心配したり、不安視したりすることがなくなるというのです。

そして自分を愛するためには、「いまの自分が満ち足りている」と感じることが必要。だからこそ日常的に、細かなことに対して「満ち足りている」「幸せだ」と感じることが重要。ご飯を食べて「おいしかった」、読書をして「おもしろかった」と思うなど、小さなことでいいそうです。なぜなら、そうした積み重ねによって、満ち足りた気分を持ち続けることができるから。

その結果、「自分は幸せだ」と感じ、自分を愛することができるようになるというのです。ただし、過剰な自己愛には注意が必要。「自分が正しい」「自分には能力がある」という思い込みは、周囲の人への恨みや不満に変わるものだから。

また、自分を愛するための大切な要素が人間関係。周囲の人から愛されている、評価してもらっている、認めてもらっているという実感を持てれば、自分に対する自信が芽生え、自分を愛することもできるからです。なお、よい人間関係をつくるには、相手に対して善意を持って接することが重要。そうすれば、相手からも好意が返ってくるわけです。(84ページより)

6. 自分を褒める。自分に魔法をかける

人は「困難を乗り越える力がある」「独創性を持っている」などとポジティブに肯定されると、実際にそうだと思い込む傾向があるそうです。だからこそ、自分を褒めておだてて、激励すればいいというのです。たとえば受験勉強をしているなら、「きょうも1日、勉強をこんなにがんばった。こんなに勉強しているんだから絶対に受かる。明日もがんばろう」などと、自分をとことん褒めるということ。

そうやって上機嫌を保ちながら次を目指せば、そこから結果を出しやすいわけです。大切なのは、どんな結果が出たとしても、まずは自分を褒めること。「よくやった」と自分を励ます習慣をつけるだけで、感情が前向きになってくるといいます。(88ページより)

7. 「明日の自分は成長している」と信じる

著者が「あなたもお金持ちになるかもしれないですよ」「素敵な伴侶が見つかりますよ」などと口にすると、苦笑しながら頭を振る人がいるそうです。「ずいぶん能天気なことをおっしゃいますね」と。しかしそれでも著者は、「自分に奇跡が起きる」と信じることが大切だと考えているそうです。

自分を信じる人は、夢や目標に向かって努力できる人だから。そして自分を信じる気持ちがあれば、不幸な時期があっても必ず乗り越えられるものだから。さらには逆境にも焦らず、感情をコントロールできる人でもあるのだといいます。

でも、自分を信じられるようになるためにはどうすればいいのでしょうか? この問いに対して著者は、素直になること、もっといってしまえば「アホになる」ことが重要だと記しています。アホになって信じれば、迷いや不安がなくなる。見栄やプライドを捨て、いろいろな人から教えてもらい、積極的に行動する。結果として物事がうまくいくという考え方です。(92ページより)

8. 自分を支える複数の柱をつくっておく

自分を支える柱が1本しかないとしたら、不安になって当然。しかし(たとえば趣味、あるいは家族との結びつきなど)複数の柱を持っていれば、1つの柱が倒れても「別の柱があるから大丈夫だ」と心の余裕が生まれるもの。

また、柱を持つことと関連して、「自分でうまくいくと思える得意分野」を持っておくことも重要なポイントだとか。小さなことでもいいから成功を体験することで、自分に自信が持てるというのです。得意分野でうまくいっていると安心できるもの。他のことで失敗したとしても、「まあいいや、自分には得意分野があるから」と思うことができ、不機嫌にならずにすむというわけです。(96ページより)

他にも「和田式・気持ちの整理術」を筆頭に、感情を平穏に保ち、穏やかな自分をキープするためのメソッドがわかりやすくまとめられています。コミュニケーションなどでストレスを感じている人には、きっと役立つことでしょう。

(印南敦史)

メディアジーン lifehacker
2017年1月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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