6年前に朝日新聞出版から『夢の国』というタイトルで世に出た小説が、大幅に加筆訂正、改題されて復刊された。2人を殺害した無期懲役囚の著者が、朝鮮半島から夢を求めて日本に渡り、激しく生きた父にささげた物語である。
鉱山労働者になった男は、己の腕力だけを頼りにのし上がり、戦後になると用心棒、債権回収業をへて金貸しとして成功を収める。著者は戦後の日本の空気と、狂犬のような男の生き方を、圧倒的な筆力で描いてゆく。息子に注ぐ男の不器用で濃密で暴力的な愛情が強く胸を打つ。ぜひとも映画化してほしい作品である。(河出書房新社・1500円+税)
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2017年1月29日 掲載
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