決して難しくない! たった10秒で効果を発揮する「雑談」の力

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会話がはずむ雑談力

『会話がはずむ雑談力』

著者
齋藤 孝 [著]
出版社
ダイヤモンド社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784478068618
発売日
2017/01/14
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

決して難しくない! たった10秒で効果を発揮する「雑談」の力

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「雑談が苦手で、どうしても話が続かない」、そんな悩みを抱えている方は決して少なくないはずです。しかし、それを「口下手だから」「トーク術がないから」「コミュ力がないから」と考えてしまうのは思い違い。『会話がはずむ雑談力―――10秒でコミュニケーション力が上がる』(齋藤 孝著、ダイヤモンド社)の著者は、そう主張します。

雑談の本質は、相手との距離を縮め、その場の空気を和らげること。ペラペラと饒舌に胸中を披瀝(ひれき)することではありません。話の上手下手、トーク術の有無はまったく関係ないのです。
(「はじめに 毎日使う雑談力こそ、最強のスキルである」より)

沈黙が続くとつい焦ってしまうものですが、黙っていることで感じる「気づまり感」や「気まずさ」「居心地の悪さ」を解消できればOK。しかもそれは、ちょっとした法則やルールを守り、簡単なテクニックさえ身につければ誰にでもできるというのです。

いつも沈黙になってしまう、雑談はどうも苦手という人は、雑談ができないのではなく、まだそのやり方を知らないだけなのです。
(「はじめに 毎日使う雑談力こそ、最強のスキルである」より)

この言葉には、たしかに説得力があります。そこで、雑談をもっと身近なものにするためのヒントを紹介したという本書の第1章「まずは『10秒の雑談』を身につける —-声かけ、話して、別れる『会話の基本』」を見てみましょう。

まずは10秒の雑談を身につけよう

腰を据えての長時間におよぶ雑談とは異なり、実際の日常生活においてもっとも多い雑談の機会は、ちょっとした「すきま時間」にあるものです。そして重要なのは、この「すきま時間」を、「気まずい時間」から「心地よい時間」に変えること。

ほんのちょっとの時間の、なにげない会話ができるようになるだけで、人づきあいに関する苦手意識はなくなり、コミュニケーション能力も高まり、好感度もアップするというわけです。その点を踏まえたうえで、著者は雑談を次のように定義づけています。

雑談のベストタイムは「30秒」。
そして、雑談になり得る時間の最小単位は「10秒」。
10秒あれば、誰もが雑談ができる。
逆に言えば、雑談は10秒で十分なのです。
(18ページより)

だとすれば、「すきま時間」を攻略するには、10秒雑談ができればいいということになります。そこで、まずは基本中の基本として「10秒の雑談」を身につけることを著者は提案しています。(16ページより)

日常会話は10秒で成り立っている

ゴミ出しでマンションの管理人さんに会って交わすこんな会話、
「おはようございます。あれ、誰か引越しですか」
「3階の○○さんが」
「へえ、寂しくなりますね」
「そうですね」—-これで約10秒。

(中略)

オフィスの階段の踊り場でばったり顔を合わせた同僚と交わすこんな会話、
「先週ゴルフだったんだって」
「大雨で散々だったけどな」
「今度、行こうぜ」
「ああ連絡する」—-これで、約10秒。
(20ページより)

このような「すれ違いざまのやりとり」は、日常的にあるもの。つまり誰もが普段から、たったの10秒で雑談を交わしているわけです。「そんなものが雑談といえるのか」と思うかもしれませんが、そのことについて著者は反論しています。

黙ってすれ違うのではなく、目をそらして立ち去るのでもなく、ちょっと話して、ちょっと打ち解ける。たったの10秒の雑談ではありますが、これもちゃんとした会話であり、お互いの心がほぐれて場の空気も変わる、立派なコミュニケーションだというのです。たしかにそう考えれば、少し気持ちが楽になるはず。それほど、雑談なんて簡単だということです。(20ページより)

「10秒なんてあっという間」は誤解

テレビのコメンテーターとして番組に出演する機会も多いという著者は、「どの番組でもコメントは5~10秒程度にまとめるのが基本」だと記しています。実際、コメントを求められて15秒も話していると、「話が長い」と思われ、編集でカットされることさえあるというのです。

いわれてみれば15秒とは、テレビCMの1本分にあたる長さ。そう考えると長い気がしますし、15秒間ずっと話し続ければ、「テレビ的に長い」と判断されても当然だということになります。

しかし、それは裏返せば、「10秒あればそこそこの話ができる」ということでもあるはず。そして「10秒であれば、『長い』と感じずに聞ける」ということにもなるでしょう。だからこそ、10秒は雑談にとって絶妙な長さなのだと著者。

このことは逆から考えてみても理解できます。もし、会話の途中でいきなり全員が3秒間黙り込んだとしたら、その沈黙は非常に長く、気詰まりな感じがするでしょう。だとすれば、それが10秒にもなれば大きな違和感を覚えることになるだろうという考え方。

いわばポイントは、10秒という時間の長さを意識してみることだと著者はいうのです。意識するだけで、この10秒が価値ある時間に変わっていくという考え方です。なるほどそう考えれば、雑談についてのネガティブなイメージも払拭することができるかもしれません。(24ページより)

たった3ステップで完成! 雑談の超・基本型

武道や武術に「基本の型」があるように、雑談にも「まず覚えておくべき基本型」があると著者はいいます。具体的にいえば、雑談の基本は次の3ステップ。

雑談力が上がる10秒雑談・基本ステップ

ステップ1 声をかける → ステップ2 話す → ステップ3 別れる
(30ページより)

意外なほどシンプルですが、突き詰めれば雑談はすべて、この3ステップで構成されているものだというのです。いってみればこの3ステップが、余分なものをそぎ落とし、必要最小限の要素だけを残した雑談の「基本型」だということ。

そしてポイントは、「10秒間、同じ話題でそのまま話し続けるのではない」ということ。ステップを踏んで、言葉を交わし、最後は別れる。別れのひと言を告げることで、雑談は完成するというわけです。なお、相手に気を使ったり、互いにストレスを感じながらダラダラと続く中身のない会話は、本書でいう雑談とは別の、単なるムダ話。

相手へのちょっとした心づかい、一瞬の場づくり雰囲気づくり、緊張した空気を動かしてほぐす、といった明確な意志を持って交わされ、さっと終わらせることができる。これこそが、10秒雑談の極意です。(31ページより)

こうした雑談力のある人こそ、真にコミュニケーション能力が高い人なのだと著者は主張しています。(30ページより)

著者は2010年に、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)を出版した人物。当時は雑談の存在意義を問う声も多く聞かれたといいますが、翌年の東日本大地震を機に、「なにげない日常会話」「ちょっとした雑談」の意義が再評価と痛感したそうです。

中身のない、結論もない、何気ない話をちょっとだけして、「じゃあまた明日」と別れの言葉を交わす。そして明日も同じように「おはよう」と声をかけ、同じように何気ない会話が始まる。
私たちに人と人とのつながりをもたらし、強く生きる力を授けてくれるのは、こうした何気ない日常です。
(「はじめに 毎日使う雑談力こそ、最強のスキルである」より)

その土台になるのが、「普段のちょっとした会話」である雑談だというわけです。

(印南敦史)

メディアジーン lifehacker
2017年2月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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