『深い穴に落ちてしまった』
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『深い穴に落ちてしまった』 イバン・レピラ著、白川貴子訳
[レビュアー] 産経新聞社
森の中の穴に落ちてしまった兄と弟。深さ7メートルから出ようとするが出られない。イモムシやウジ、木の根を食べ、助けを叫ぶ極限状態の中、弟の精神状態は常軌を逸していく。そして…。
不条理を描いたアルベール・カミュにも通じると評された本書は「大人の寓話(ぐうわ)」である。穴は何を象徴しているのか。兄と弟の会話は何を示唆するのか。閉塞(へいそく)する社会からの解放なのか、革命なのか。そこへの意味づけは、読者の数だけあるに違いない。
各章の数字が素数のみだったり、仕掛けもたくさん。緻密な構成に、読み返すこと必至だ。(東京創元社・1500円+税)