ほめることのメリットとは? 「ほめ上手」になって、人間関係を円滑にしよう

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ほめることのメリットとは? 「ほめ上手」になって、人間関係を円滑にしよう

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

たった一言で人生が変わるほめ言葉の魔法』(原邦雄著、アスコム)の著者は、「世界中の人たちを輝かせる」ことをミッションに掲げているという人物。「一般財団法人 ほめ育財団」を設立し、ほめて人を育てる「ほめ育」を広げるべく、日本はもちろんアメリカ、中国、インド、カンボジアなどへ活動の幅を広げ、「ほめることのすばらしさ」を伝えているのだそうです。

ハーバード大学やザ・リッツ・カールトンホテルでのセミナーをはじめ、講演活動も年間200回以上行っているのだとか。つまり本書においては、そんな実績を軸に「ほめ言葉」の効能を説いているわけです。

もちろん、ただほめればいいというわけではありません。相手の心を動かす技術があるのです。(中略)大切なのは、「結果」をほめるのではなく、「行動や努力」、そして「人間性」をほめる、という点です。(中略)ほめ言葉が、ほめられた人の人生をも変えてしまう理由。それは、ほめ言葉がその人の生き方、そして人間性を肯定するからなのです。(「はじめに」より)

しかも、ほめることは、ほめられた人を肯定するだけではなく、ほめた人自身の心も満たすのだと著者はいいます。自分のほめた人が、今度は自分をほめてくれる。そんなプラスの循環が自然に生まれるというのです。では、そうした循環を生み出すためには、具体的にどうすればいいのでしょうか? 第3章「誰でもほめ上手になれる12の法則」から、いくつかのポイントを抜き出してみましょう。

相手の気持ちがわかる「視点移動」とは?

人間関係をよくするコツとして、「相手の気持ちになって考える」ことは大切。相手の気持ちに共感できて初めて、相手の心を感動させるほめ言葉がいえるということです。ちなみに相手の立場に立って考えてみることを、著者は「相手軸」と表現しています。

ただ、相手軸になるのは、実際のところなかなか難しいもの。どうしても人は自分中心に物事を考えてしまいがちなので、「相手はきっとこう思っているだろう」と考えてみたとしても、外れてしまうことが往々にしてあるということです。しかし、自分の目線で相手の気持ちを判断しても限界があるのだから、それは当たり前のこと。

では、ほんとうの意味で相手軸に立つには、どうしたらいいのでしょうか? このことについて、著者は次のように述べています。

まずは、自分がぐんと小さく、手のひらサイズになった姿を考えてください。そして、共感したいと思っている相手の体の中に、耳の穴でも、口からでも、どこからでもいいから、ポンと入ってしまう自分を想像してください。
相手の中にいる自分をイメージできたら、相手の目を通じて世界を見てみましょう。それくらい、思い切って相手と一体化することを想像できれば、リアルに相手の目線に立てます。
わたしは、この考え方を「視点移動」とよんでいます。(105ページより)

視点移動してみれば、相手の気持ちがわかる。そうすれば、結果的にそれがお互いの信頼感へつながっていくという考え方です。(104ページより)

まずは「アイコンタクト」だけでいい

仕事の場でも、あるいはパートナーとの関係においても、相手との関係が悪化していて、「ほめるどころじゃない、会話もろくにないし、目を合わせることもないよ」というようなことはあるもの。でも、そんな状況でも「ほめる」ことはできるのだと著者はいいます。それは、アイコンタクトの交換。

ある研究によると、良好な状態ならば、会話している時間の約6割は相手の目を見ているそうです。それほど、アイコンタクトには、相手への関心や愛情を伝える役割があるのです。(110ページより)

つまり、もしも相手と仲なおりしたいのであれば、まずは軽く目線を合わせて見るべきだということ。それだけでいいというのです。すぐに視線が交わらなかったとしても、目線を向け続けていれば、相手に気持ち月渡っていくもの。そして、やがて声をかけやすい環境ができてくるということ。そこまで行ければ、あとはいろいろな言葉が出てくるようになるもの。何気ない、ごくさりげない言葉が、氷を溶かすように距離を少しずつ縮めてくれるというわけです。たしかにそれなら、「いきなりほめてきたりして、裏ではなにを考えているの?」などと勘ぐられることもなさそうです。

ただし、どんなほめ言葉でも同じですが、単発に終わってしまったのでは意味がないもの。少しずつでいいので、続けることがコツだといいます。(109ページより)

人をその気にさせる「ほめプラスα」

子どもが、テストでなかなかいい点を取れなかったとします。そんなとき叱りたくなっても無理はありませんが、少しでも努力の跡が見て取れたのなら、きちんとほめるべきだと著者は主張しています。きちんとほめてあげれば、子どもは「次もがんばろう」という気持ちになるから。すぐ結果に繋がらなかったとしても、少なくともその子は、がんばることに喜びを感じるわけです。

誰しも、先が見えないことに対しては不安を感じてしまうもの。たとえば登山をした際、それが初めての山で、どれくらい歩けば頂上に着くかわからないとしたら、歩くペースや休憩のタイミングはつかみにくくて当然です。

でも、「いまは五合目」「次は八合目」ということがわかれば、「ここまで登って休憩しよう」「ここは、ちょっとがんばって行こう」とペース配分ができ、山頂までなんとか登っていけるでしょう。

「自分が何をがんばったらいいのか」
「何をしたらほめられ、何をしたら叱られるのか」
「今の自分がどこにいて、どのぐらい成長してきたのか」
これらのハードルを小刻みに、そして適切に設けて、ほめてあげましょう。単発でほめるよりも、こうして継続的にいろいろな角度からほめてあげたほうが、より成長が期待できるのです。(114ページより)

著者は多くの人に、「1日1ほめ」を推奨しているのだそうです。「継続は力なり」といいますが、それはほめることにも当てはまるというのです。だから、たった一言でも、LINEのスタンプひとつでもいいから、続けることを意識すべきだと記しています。

お互いにほめることに慣れっこになったら、あえて意識し、言葉を変えてほめて見ることも大切。もちろん仰々しい言葉は必要なく、「よくやったね」「やるじゃん」「ほう」といった一言で十分。そして、こまめに回数を重ねることが大切。うわべのほめ言葉ではなく、本当にほめられるべきことを、たとえ小さくてもいいから積み重ねてもらいたい、それが、ほめられる人の気持ちなのだといいます。(112ページより)

「ほめポイント」がすぐに見つかる質問のしかた

著者は、介護施設で80歳くらいのおじいちゃんやおばあちゃんに話を聞くことがよくあるのだそうです。そして、そんなときは「相手の方のよいところは、どんなところだろう」と思いながら質問をするのだといいます。その際、すらすら答えてもらうコツは、その人の生き方を知ろうとすることだとか。

まずは、「この施設はいかがですか」「なにかお困りではありませんか」と悩みに共感するところから入り、「山本さんって学生時代はクラブ活動をされていたんですか」「いままでどんなお仕事をされていたのですか」などと、過去を振り返ってもらう。すると、自慢話や苦労話がいくらでも出てくる。みんな喜んで、いろいろな話を聞かせてくれるというのです。

なぜ、スムーズに答えてもらえるのでしょうか。
大事なのは、あなたのことをもっとよく知りたい、大切にしようとしているものを教えてほしいと思う気持ちです。もっと話を聞かせてほしい、という意思表示をするのです。
こうした気持ちを持ちながら、相手に質問を投げかけると、相手のいいところがいっぱい見つかります。(132ページより)

相手に興味を持ち、その行動をほめながら質問をしていけば、相手の素晴らしい部分がどんどん見つかるといいます。そうすることで、関係性が良好になっていくわけです。これは家族やパートナーだけでなく、さまざまな相手にいえることでしょう。(131ページより)

「ほめる」と聞くと、つい子どもをほめることをイメージしてしまいがち。もちろんそれも重要ですが、本書を読めば、ほめることがビジネスの現場にも有効であることがわかるはず。オフィスの雰囲気をよりよくするためにも、なにかと役立ってくれそうな1冊です。

(印南敦史)

メディアジーン lifehacker
2017年2月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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