「空気を読める人」になるためのコツとは? ~おもしろい伝え方の公式

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「空気を読める人」になるためのコツとは? ~おもしろい伝え方の公式

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

初対面でも話しがはずむ おもしろい伝え方の公式』(石田章洋著、日本能率協会マネジメントセンター)の著者は、大学在学中に六代目三遊亭円楽(当時は楽太郎)に弟子入りして落語家になるも、数年後には放送作家に転身したという異色の経歴の持ち主。以後30年にわたり、「世界ふしぎ発見!(TBS)」「TVチャンピオン(テレビ東京)」を筆頭とする、あらゆるジャンルのテレビ番組の企画・構成を担当しているのだそうです。

ちなみに著者は「おもしろさ」が求められる世界で生き抜くために、「どうして、この人の話はおもしろいのだろう」「なぜ、あの人の話はウケるのだろう」と考え続け、身のまわりにいる「なぜか話がおもしろい人」の話し方も注意深く観察してきたのだとか。そしてその結果として気づいたのが、「誰でもおもしろい話ができる伝え方の公式」が存在するということだったのだといいます。つまり本書は、そんな経験や思いを軸に書かれているということ。

この本は、ユーモアのある伝え方を身につけるための本です。
「ユーモア」
この言葉には、さまざまな意味があるようですが、本書では、「日常会話や雑談で人を笑顔にするもの」と定義しています。(中略)ユーモアを身につけている人といない人では、長い人生に大きな差が生まれてくるはずです。
なぜなら、ユーモアはコミュニケーションにおける最強の武器だからです。
(「はじめに」より)

なお本書で紹介している「笑いを生み出すためのシンプルな公式」は、「空気を読む×笑いの原理×伝える技術」という3つだけなのだそうです。きょうは「空気を読む」に焦点を当てた第2章「おもしろい伝え方の公式1. おもしろい人は『空気』を読む」をクローズアップしてみたいと思います。

おもしろい人は、必ず空気を読んでいる

「空気を読む」ことは、あらゆるコミュニケーションの基本中の基本。空気が読めなければ、どれだけ本を読んでも、どんなテクニックを使ってもムダ。そういっても過言ではないとすら著者はいいます。なぜなら、コミュニケーションは基本的にアドリブだから。その場の空気にそぐわないタイミングの悪い発言は、それがどんなにしゃれたユーモアであっても、どれだけウィットに富んだジョークだったとしても、確実にスベってしまうというのです。

空気が読めると、会話は驚くほどラクになるもの。逆に、空気を読めずに話をするのは、まったく知らない街をカーナビなしで運転するようなもの。当然、必死でハンドルにしがみつくような緊張感が伴うわけです。しかし空気が読めれば、走り慣れた道をリラックスして運転するように、会話もとても気楽になるはず。だから「空気を読む」というスキルが身につけば、いまよりもっと伝え方がおもしろくなるはずだと著者は記しています。(53ページより)

そもそも、空気を読むってどういうこと?

しかし、そもそも会話のなかで「空気を読む」とは、どういうことを指すのでしょうか? それは「空気が読めない人」を考えてみればわかるそうで、たとえば失恋した友人をみんなでなぐさめているとき、「私、彼からプロポーズされたんだ」などと発言するような人がいたら、一気に場が白けてしまうわけです。

これはやや極端な例ではありますが、そういう「おまえ、空気読めよ」といいたくなる人には、それまでの「流れ」を一気に変えてしまう、あるいはせき止めてしまうという共通点があるといいます。つまり会話における「空気」とは、「流れ」のこと。そして「空気の流れ」とは、「どういう人たちが」「なんのために」「どこに向かっているのか」といった、目的や方向性のことなのだそうです。

だとすれば、「どうやって空気を読めばいいのか」が気になるところ。このことに関してまず大切なのは、そこに集まっているのが「どういう人たち」なのかを見極めることだといいます。それを知っておけば、「その集団内ではどういう価値観が共有されているのか」「どんなことが常識とされているのか」がわかるわけです。逆にいえば、その価値観や常識から外れたことをいうと「空気が読めない人」になるということ。

なお多くの場合、空気の流れは、その場でもっとも影響力のある人に配慮している多数派がつくり出しているのだそうです。つまり、誰がどの程度の影響力を持っていて、それぞれの構成員がどんな役割を果たしているかを把握することで、空気の流れはかなり見えてくるというわけです。(57ページより)

観察力を鍛えれば空気は読める

こうして「空気」について考えていくと、もっとも必要なことが見えてくると著者はいいます。なにかといえば、それは「観察力」。

・いま、話している相手はどういう人なのか?
・なにを目的としているのか?
・その話をどこにもっていこうとしているのか?
(63ページより)

これらについて観察することが重要だというのです。そのためには、その場を観察するべき。相手の声のトーンや言葉の言い回し、どんな仕草で、どんな表情をしているのか。それらを注意深く観察していれば、相手がどういう人で、なにを目的として、どういう展開にもっていこうとしているのかが読み取れるということです。

なお、観察の指標のひとつとして挙げられるのは、まばたきの回数だそうです。人は興味を持って話を聞いているときは、まばたきの回数が減るといいます。ということは、もし自分の話を聞いている相手がしきりに瞬きをしていたとしたら、それほど興味を持っていないということになるわけです。もちろんこれは一例ですが、人は無意識のうちに、こうしたサインを発信しているということ。それを見逃さないためにも、相手を注意深く見ることは大切。

逆にいえば、空気が読めない人は、こうした観察ができていないわけです。その最大の理由は、話をしている相手よりも、自分自身に注意が向いているからではないかと著者は推測しています。

すべてのコミュ二ケーションにおいてもっとも大切なのは、「自分が相手にどう思われているか?」ではなく、「相手がどう思っているか?」。だから、「自分はいま、どう見られているのだろう」「こういうことを話して、頭のいい人だと思われたい」などと、意識のベクトルを自分のほうに向けていたのでは、場の空気を読むことなどできないわけです。

話をする際、いちばん注意を向けなければいけないのは、相手の気持ち。「自分がどう思われているか」などと余計なことを考える余裕があるなら、相手をしっかり観察しながら話すべきだと著者は主張しています。それまで自分に向けていた注意を相手に向けるだけで、相手の反応はみるみる変わるものだそうです。

観察力が高まれば「話題」に困らない

初対面の相手と話すときや、ひとつの話題が終わったあとなどに、話のネタが思い浮かばず、気まずい思いをすることがあるもの。しかし空気を読むための観察力が高まれば、どんな相手と話すときでも、話題に困ることはなくなるといいます。

相手を観察していくと、さまざまなことに気づくはず。ファッション、アクセサリー、文房具といった持ち物や髪型など、相手がいつもと違うところ、あるいは他の人と違うところを話のネタにしてみればいいわけです。その人のこだわりに気づき、話題にできれば、一気に会話が盛り上がるとか。

また、相手の細かな部分にまで気づくことは、相手との距離を縮めるためにも有効だといいます。なぜなら、人は自分に関心を持てくれる人に好意を持つものだから。

最初は些細なことから始めても構いませんので、相手を観察して、変化や違いに気づいてあげましょう。コミュニケーション上手は観察上手なのです。(69ページより)

落語家が師匠に弟子入りすると、まず徹底的に叩き込まれるのも「周囲に気を配ること」なのだそうです。「気配り」は、まさに相手の気持ちを考える修行だというわけです。そして常に周囲に気を配ることができるようになれば、落語家にとって不可欠な資質である「空気を読む」ことができるようになるということ。(67ページより)

冒頭でも触れたとおり核になっているのは「ユーモア」ですが、重要なのは、本書が「ユーモアを媒介したコミュニケーション論」だということ。タイトル中に「おもしろい伝え方」という言葉が織り込まれているのも、そんな理由があるからこそ。「どうも伝え方がうまくなくて…と悩んでいる方には、きっと役立つと思います。

(印南敦史)

メディアジーン lifehacker
2017年2月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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