腕力でミスコンをつかみとる「ラムちゃん」(「たくましい女」その2)
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- うる星やつら〔新装版〕
- 価格:550円(税込)
女の人生をマンガに教えてもらおう! をテーマに文芸誌『yomyom』で連載中のトミヤマユキコさん「たすけて! 女子マンガ」。今回のテーマは「たくましい女」です。『女の友情と筋肉』や『その娘、武蔵』といったマンガの強い女たちが、“女らしさの平均値”を気にしてキョロキョロしがちな私たちを勇気づけてくれると語ったトミヤマさん。では、ミスコンに出場するような女性はどうなのかというと……?
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スレンダーとかセクシーとはほど遠い女に憧れるといいながら、じゃあ高橋留美子『うる星やつら』の「ラムちゃん」みたいな女は嫌いなのか?と問われれば、決してそんなことはない。電撃を自在に操るラムちゃんだが、実は腕っぷしも滅法強い。たぶん電撃を封印されても、イオリたちと互角に戦えるぐらい強いのではないか。
同作に収録された「ミス友引コンテスト」(全5話)は、ラムちゃんのたくましさを知るのにうってつけのエピソードだ。物語は、ご存じ「諸星あたる」がこっそりやっていた「美人コンテスト」からはじまる。男子生徒だけでやっていた人気投票が教員にバレてしまうのだが、まさかの校長がこれに興味を示す。女子生徒たちは顔で判断され、いやらしい目で見られることを拒否するが、校長は次のように叫んで、女子たちの声をはねのけてしまうのだった――「美貌 知性 健全な精神!!/そして力と技!!/これらすべてをかねそなえた女性こそ!!/ミス友引と呼ぶにふさわしい!!」。
こうして、友引高校の真の美女を決める大会が始まる。おもしろいのは「総合的な女性の美」を評価すると言いながら、見た目はわりとどうでもよくて、握力の検査をしたり、「女対動物のタッグマッチ」を開催したりしているところ。とにかく「力と技」への注目度が高い。水着審査なども、一応あるにはあるのだが、水着というよりは、女子プロレス選手の衣裳のような扱いだ。つまり、どれだけたくましいかが、ミス友引を決める基準となっているのである。
予選を勝ち抜き、本選に残ったラムちゃんたち5名は、巨大なクマやらトラやらと戦い、見事勝利を収める。試合の最後なんて、ひとり一頭ずつ猛獣を抱え、ぶん投げて空中でぶつけ合うのだ。バカバカしいと言えば、バカバカしいのだけれど、キュート&セクシーのお手本みたいなラムちゃんを登場させておいて、その魅力を腕っぷしで測ろうというのは、考えてみるとけっこう斬新である。肉体的なたくましさで女の魅力を決めるイベントを「美人コンテスト」と呼ぶラディカルさはもっと評価されていいハズ!! 「いや実にすばらしかった!!/みがかれた技といい!!/きたえぬかれた体といい!!/まったく採点を忘れるほど……」――こう語る校長の目はマジだ。そしてレフェリーを務めたあたるも、彼女たちの勝利を素直に祝福している。強くたくましいことが、女らしさを諦めることでもなければ、乱暴者になることでもなく、素敵な女子の証となる世界。ああ、わたしも友引高校に通いたい。
かわいいんだからもういいじゃない、おっぱい大きいんだからもういいじゃない、ではなく、女子とてたくましい方がいいんじゃない? という、じつはけっこう深いメッセージに、ギャグという粉砂糖をかけてみせる。それを甘いな~美味しいな~と食べているうちに、たくましい女が好きになってゆく。そういうマジックが『うる星やつら』にはある。
《「たくましい女」その3につづく》
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