『右傾化する日本政治』
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右傾化する日本政治 [著]中野晃一
[レビュアー] 林操(コラムニスト)
ちょと政治の話なんかしてみようかねと思い立ったのは、政治モノの出物が新書にも増えてきたからで、最初お薦めするつもりだったのは先月出たばっかりの柿崎明二『検証 安倍イズム 胎動する新国家主義』(岩波新書)。
著者は共同通信の政治畑なのに“記者だけに漏らした総理の独白”みたいな眉唾ネタじゃなく、公になってる語録の山から安倍の実像を掘り出していく手法が見事で、平成の木に果たして仁王は埋まってるのか、なんて「夢十夜」めいた読み方までできる快作ながら、安倍チャン当人の姿が見えてくると、あらためて押さえておきたくなるのは、彼がこの時この場所に首相としてまたぞろ立つに至る現代史の大きな流れ。
それで思い出したのが7月発売のこの新書で、社会党再統一&保守合同から安保法制騒動までの60年、学校では教えられない60年が、リベラル寄りの研究者の立場からではあれ、明快にまとめられてるゆえ、売れ続けてるのもムベなるかな。安倍好きが嫌々認め、安倍嫌いが渋々受け入れ……ざるをえない苦い現実のつらなりが、ここにはある。
狭いニッポンに視野が限られていないのもいいところで、サッチャー、レーガンと中曽根、小泉の異同もよく見えてくるし、この国の政権交代の異常さも再認識できるから、岩波のミギ批判アベ叩きの書だろとかレッテル貼っての喰わず嫌いはもったいない。