『50の名機とアイテムで知る図説カメラの歴史』
- 著者
- マイケル・プリチャード [著]/野口正雄 [訳]
- 出版社
- 原書房
- ジャンル
- 文学/外国文学、その他
- ISBN
- 9784562051571
- 発売日
- 2015/08/25
- 価格
- 3,080円(税込)
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【手帖】人間味あふれたカメラの歴史
[レビュアー] 産経新聞社
〈写真を撮ったことのあるあらゆる人のうち90パーセント以上は、カメラ付き携帯電話でしか撮ったことがなく(略)平均して1日8回(携帯電話の)カメラを使っている〉
『50の名機とアイテムで知る図説カメラの歴史』マイケル・プリチャード著、野口正雄訳(原書房・2800円+税)の巻末に、そんな一文をみつけた。この180年間に登場した写真機から画期となった50台を選び、実機の写真とその機材で撮られた作品、関連する図像などを紹介する本だ。最初の1台は1839年に発売されたダゲレオタイプ。最新のものとして50番目に登場するのが、カメラ付き携帯電話である。
いまや、ほとんどの人は単体のデジタルカメラもフィルムカメラも使ったことがない。携帯電話で撮った写真をソーシャルメディアにアップロードする。それが「写真」の標準的な姿となったわけだ。
しかし、本書を読めばまた、カメラという機械の本質はあまり変わっていないことも理解できる。いま、この瞬間のことを残しておきたい、誰かと共有したい。そんな人間の願望を実現すべく、技術者や研究者は努力を重ねてきた。
面白いのは、その技術革新が効率化や高性能化だけを目指してきたわけではないこと。もちろん、より手軽に、より小さくといった流れはあるけれど、一方で「より楽しく」という要素も入ってくる。
コダック、ライカ、ハッセルブラッド、キヤノン、ニコン…といったカメラ史の王道のみならず、懐中時計を装った「チッカ」など奇妙な秘密カメラの数々にも目を配って“正史”とする。そのスタンスに好感が持てる。