『立志・苦学・出世 受験生の社会史』
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『立志・苦学・出世 受験生の社会史』竹内洋著
[レビュアー] 産経新聞社
多くの日本人が一度は経験する身分「受験生」。普段疑問にも思わないその立場が、実は諸条件が重なった上で成り立つ、近代日本の象徴的な存在であることを教育社会学的に解き明かしていく。
試験と学校が軸の近代的人材登用システムが始動したのは明治20年代。30年代半ばには激しい受験競争の時代が到来する。この「受験の近代」は規模を拡大しつつ昭和40年代まで続き、豊かさへの欲望に支えられた努力と勤勉は近代日本の価値となった。文庫版増補として階層分化が進む今の状況にも触れる。受験改革を論じる前に、まず目を通すべき一冊。(講談社学術文庫・800円+税)