2015年を書評で振り返る ピケティ、ドローン、水木しげる、戦後70年、安保法案から爆買い、SWまで

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 2015年の残すところあと数日。つい先日12月1日にオープンしたばかりのBook Bangですが、今年起こった時事問題を扱いつつ、さらに深くまで踏み込んだ良書がたくさん紹介されています。今年の出来事を振り返りつつ、年末年始に楽しめる一冊をみつけてください。

■1月29日 『21世紀の資本』トマ・ピケティ氏来日

 2014年末に発売され高額でお堅い経済書ながら異例の売れゆきを示した『21世紀の資本』(みすず書房)。その著者トマ・ピケティ氏が1月29日に来日。大きな話題となりました。資本主義の限界や矛盾を説いた同書は我々に資本主義が立ち行かなくなった現実と向き合うことをつきつけ、国家レベルでもポスト資本主義の模索がはじまっています。資本主義の今後を考える三冊のレビューがこちら。

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■『「衝動」に支配される世界』Roberts, Paul /神保 哲生[著](ダイヤモンド社)
資本主義を終焉に至らしめる病

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■『さらば、資本主義』佐伯啓思[著](新潮社)
戦後日本の不幸な資本主義【自著を語る】

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■『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』渡邉格[著](講談社)
「日本一の過疎」に韓国人が殺到!?「田舎の小さなパン屋」が熱狂的に支持されるワケ

■4月4日 音楽プロデューサーのつんく♂さん、声帯全摘を公表

 4月4日近畿大学の入学式で登壇した音楽プロデューサーのつんく♂さんが喉頭がんの手術で声帯を失ったことを公表し、大きな話題に。それまでの経緯を明かした『「だから、生きる。」』を9月に上梓し、歌手のつんく♂さんが声帯を失うという事実の重さや、奥さまの献身が描かれ感動を呼びました。

■4月22日 首相官邸にドローンが落下

 4月22日午前、放射能マークが貼られた容器や発煙筒などが装着されたドローン(小型無人航空機)が首相官邸の屋上で発見されました。「反原発を訴えるため」と動機を語る男性が2日後に出頭。男性が犯行の一部始終を書いたブログを公開したことも話題になりました。また今年は一部のお祭りや文化財にもドローンが飛来し大きな社会問題にもなりました。12月10日にはドローンを規制するための改正航空法も施行されました。技術の進歩は戦争から始まるのは常識ですが、戦場の様子を一変させたドローンが個人レベルでも使用可能になる未来はそら恐ろしくもなります。兵器としてのドローン誕生までを描いた一冊。

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■『無人暗殺機 ドローンの誕生』リチャード・ウィッテル[著](文藝春秋)
最新兵器の裏にある人間ドラマ

■5月9日 イルカ捕獲をめぐって、日本動物園水族館協会の会員資格停止に

 日本の水族館が追い込み漁で捕獲したイルカを購入していたことを問題視し、世界動物園水族館協会(WAZA)が日本動物園水族館協会(JAZA)の会員資格を停止しました。その後JAZAは追い込み漁で捕獲されたクジラ類の入手禁止を会員施設に通知。それを受けJAZAを退会する水族館もあらわれました。また今年後半には国際的ハッカー集団「アノニマス」が、イルカ漁への抗議として日本のウェブサイトを狙ったサイバーを繰り返すなど、今年もイルカ漁を巡り国際的な軋轢が繰り返されました。さて我々はイルカ漁についてどう考えるべきなのでしょうか?漁業経済学者の濱田武士さんがこの問題を扱った一冊をレビュー。

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■『イルカ漁は残酷か』伴野準一[著](平凡社)
『イルカ漁は残酷か』 伴野準一著

■6月29日 アジアインフラ投資銀行(AIIB)設立協定の調印式が北京にて行われる

 アジアのインフラ整備に資金を提供するための機関、アジアインフラ投資銀行(AIIB)が中国の主導により設立されました。日本やアメリカが参加を見送ったものの、EU諸国やロシア、東アジアの国々が参加を表明し、中国の重要さが世界で増大している事を見せつけた格好となりました。しかし9月には株価の大暴落で、中国財政の不安定さが浮き彫りになりました。そんななか大国の興亡の裏には財政の管理が深く関わっていたということを、会計学の視点から解き明かした一冊のレビューが届いています。中国の今後を大局的な視点から占う一冊と言えます。

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■『帳簿の世界史』ジェイコブ・ソール[著](文藝春秋)
権力=財布 会計士は見た! 世界版

■8月15日 終戦記念日。太平洋戦争終結から70年が経過

 今年は戦後70年を迎えるにあたり、あらためて戦争を振りかえり、平和について考えるための企画・特集が様々な媒体で行われました。そんななか、4月には漫画家の水木しげるさんの出征直前の心境を記した手記が発見されました。しかしその水木さんも11月30日に逝去されました。時が経つにつれ、戦争体験を語れる世代の声はますます貴重なものとなっています。ただ、戦争を体験していない世代でも、丁寧な取材により当時を知ることはできるのだということを証明した一冊もあります。またあえて完全なフィクションで戦争を描き、芥川賞候補になった30代の作家もあらわれました。

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■『指の骨』高橋弘希[著](新潮社)
時代に選ばれた戦争小説

■9月19日 安全保障関連法案が参議院本会議で可決

 戦後70年を迎えたこの時期に日本はあらたな一歩を踏み出すことになりました。これらの法案の成立により集団的自衛権の限定的な行使が可能になり、自衛隊の積極的な軍事活動への参加の下地が整いました。日本は世界の平和に積極的に貢献する“普通の国”になるんだ、という意見と、テロの脅威に巻き込まれることや東アジアに緊張をもたらすことになる憲法違反の“戦争法案”だとする意見。国論を二分する事態となりました。いずれの立場にたつにせよ視野を広く持ち、偏った印象論を排すためには冷静な議論が必要です。今年の感情的な騒動を振り返りながら読むべき二冊の新書と、芥川賞受賞会見でのアイロニーで一躍話題となった田中慎弥さんが、あの「A」首相を題材にしたのか?と物議をかもした小説を紹介します。

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■『メディアと自民党』西田亮介[著](KADOKAWA)
「イメージ戦」が加速する現代の日本政治[自著を語る]

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■『右傾化する日本政治』中野晃一[著](岩波書店)
右傾化する日本政治 [著]中野晃一

■10月5日 ノーベル医学生理学賞に大村智氏が選ばれる

 昨年に引き続き今年も日本人がノーベル賞を受賞しました。医学生理学賞に大村智さん。物理学賞に梶田隆章さん。大村さんは元定時制高校の教師という異色の経歴を持ち、年間三千もの菌を調べるという地道な研究により、寄生虫によって起こる感染症の治療法を発見しました。アフリカの熱帯病に劇的な効果をあらわし、薬によってアフリカの歴史が変わったとも言えます。大村さんの発見のように歴史に名を残した薬とそれにまつわるドラマを解説した新書のレビューです。

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■『世界史を変えた薬』佐藤健太郎[著](講談社)
【話題の本】『世界史を変えた薬』佐藤健太郎著

■12月1日 今年の流行語大賞「爆買い」「トリプルスリー」に決定

 毎年発表される流行語大賞に今年選ばれたのは「爆買い」。訪日外国人観光客は今年過去最高を記録し、彼らによる「爆買い」に日本も湧きました。それにともない高級ブランド店が軒を連ねる銀座の景色は、爆買いの中心をなす中国人観光客に対応するため様変わりしました。大型観光バスで乗りつけ、大量のブランド品、家電、化粧品を両手に提げ、わがもの顔で銀座を闊歩する姿に隔世の感を禁じ得ません。かつてのバブル時代に欧米の街では、日本人もこのような皮肉と歓迎の混ざった複雑な表情で眺められていたのだと痛感する事態となりました。彼らの爆買いは路面だけではなく、ネット上にも広がっています。1日で1兆7500億円を売り上げる中国発の巨大企業アリババはどのように成長したのか、創業者ジャック・マーの歩みを振り返りつつ、中国の底力を感じさせる一冊です。

■12月18日 『スターウォーズ フォースの覚醒』が公開

 2005年の『エピソード3 シスの復讐』以来止まっていたスターウォーズ本編が10年ぶりについに再始動しました。今年は公開を控え1年間スターウォーズ関連の話題が途切れなく続き、関連本も多数出版されました。最初の作品である『エピソード4 新たなる希望』の公開が38年も前であることや、いくつもの作品それぞれにバージョンが存在すること、ストーリーの流れと公開順が前後していること、など初めてスターウォーズに接する世代は「なにか盛り上ってるみたいだけど、何から手をつけたらいいの?」という方も多いでしょう。そんな疑問に答えてくれる本や、永年もファンも納得する「濃い」本3冊の紹介です。

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■『どっちのスター・ウォーズ』立田敦子 [著](中央公論新社)
『どっちのスター・ウォーズ』立田敦子著

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■『スター・ウォーズ学』清水節/柴尾英令[著](新潮社)
「スター・ウォーズ」第一作を酷評した有名映画監督は?

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■『スター・ウォーズ論』河原一久[著](NHK出版)
スター・ウォーズ論 [著]河原一久

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 いかがだったでしょうか。やや牽強付会な結びつきもありますが、本との偶然の出会いを促進するのもBook Bangの役目です。縦横無尽に話題から話題へと繋がって行けるウェブの特性を活かし、今後も皆様に良書をたくさんお勧めできるよう頑張ります。2016年も皆様に良い本との出会いがたくさんありますように。来年もBook Bangをよろしくお願いいたします。

Book Bang編集部
2015年12月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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