【児童書】『わたしのいえ』カーソン・エリス作、木坂涼訳
[レビュアー] 永井優子
■さまざまな暮らしを思う
ずいぶんと以前、土産で小さな陶器製の家をもらった。オランダの飛行機に乗ったらくれたのだという。くすんだ白地に青い窓と屋根。アムステルダムの運河沿いには、こんなのっぽな家が並んでいるのかしら。空を飛んでやってきた家は、見知らぬ国の暮らしを思わせてくれた。
家の形はさまざま。この本には、いろいろな人や生き物が暮らす家が、静かに描かれている。スロバキアの伯爵夫人、ケニアの鍛冶屋、ロシアのおばあちゃん-。月に住む人の家や、お話の中の靴の家も出てくる。自由に羽ばたく鳥が、世界を案内してくれる。
米国オレゴン州の農場に暮らす女性作家が、絵と文を手掛けた。抑えた色味に、シックな赤が美しい。どの家も棚に飾っておきたくなるようなかわいさ。絵を描く人の家というのは、作者自身の身辺だろうか。
人間は弱い。布で体を包み、雨露をしのぐ屋根に守られ、支え合って生きている。この屋根の下、幸せだと思える人が世界じゅうにたくさん増えますように。(偕成社・1800円+税)