『京都ぎらい』
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【話題の本】『京都ぎらい』井上章一著
[レビュアー] 黒沢綾子
■京都人の「腹の中」を暴露
東京で「ご出身は?」と聞かれて「京都です」と答えるとき、後ろめたさが残る。じつは「京都市出身」と「京都人」はイコールではない。屈託なく「京都です」と言えるのは、代々洛中に住んでいる人だけ。私自身も、宇治市出身のタレントが京なまりを強調しているのを見て、つい「ええ根性してはるなぁ」と思ってしまったりする。
著者も「洛外人」の視点から、いまは亡き民族学者の梅棹忠夫氏や仏文学者の杉本秀太郎氏ら京都人の“イケズ”なエピソードを開陳、彼らの腹の中を解説してみせる。「花街を本当に支えているのは誰か」など地元民ならわかっていて言わなかったことも、容赦なく暴露していく。
このほど「新書大賞2016」(中央公論新社主催)に選ばれ、現在11刷13万部。特に関西で売れているのは、「京都人イキッてる(調子に乗ってる)」と不満を抱いている大阪や奈良や滋賀の人々が読んで、留飲を下げているからかもしれない。しかし著者の育った嵯峨(右京区)は、洛外とはいえ人気の観光地でもあり、私のようなただの洛外人には嫌みでもある。が、「京都人をつけ上がらせているのは首都のメディア」という指摘には、全面同意したい。(朝日新書・760円+税)
黒沢綾子