【写真集】『自然の鉛筆』ウィリアム・ヘンリー・フォックス・トルボット

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【写真集】『自然の鉛筆』ウィリアム・ヘンリー・フォックス・トルボット

[レビュアー] 産経新聞社

■始まりが知りたい

 19世紀の英国人発明家、トルボットの『自然の鉛筆』は、世界最古の写真集として知られているが、これまで日本語で完訳されたことがなかったそうだ。1844~46年に分冊形式で刊行された同書を24枚の図版入りで再現したのが本書。トルボットは、写真術発明までの試行錯誤を記し、技法を解説し、当時はまったくの“新技術”だった写真の特質や可能性を語っている。一読すれば、どれほど革命的な出版物だったのかが理解できる。

 写真家の畠山直哉氏が、トルボットに興味を抱いて1994年に英国を訪ねたことを回想する一文を寄せている。デジタル技術、ネットワーク技術による写真術の変化が予想されていた。で、〈終わりが気になってくると、始まりのことが知りたくなるものでしょう〉と。

 デジタル機器はどんどん高性能化。スマホやSNSが当たり前の社会で、写真とはどういう存在なのか、これからどうなっていくのか。いろいろと考えさせてくれる。温故知新とは、まさにこのこと。(赤々舎・4000円+税)

産経新聞
2016年3月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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