【手帖】二・二六事件の反乱側・警察側の記録を同時刊行

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 昭和11年に起きた陸軍将校によるクーデター未遂「二・二六事件」から80年を迎えた先月末、中公文庫から事件首謀者の青年将校、磯部浅一(あさいち)が著した『獄中手記』と、事件当時に警視庁特高部長だった安倍源基(げんき)の回想録『昭和動乱の真相』が同時刊行された。

 磯部は明治38(1905)年、山口県生まれ。思想家の北一輝に強い影響を受けて青年将校運動の先駆けとなり、二・二六事件の計画を主導。事件鎮圧後1年あまりの公判を経て、昭和12年に銃殺された。獄中でひそかにつづった社会改革や天皇をめぐる鬼気迫る文章が、晩年の三島由紀夫の作品や行動に影響を与えたことでも知られる。

 今回の文庫は、当事者から見た事件の一部始終を記録した一級資料「行動記」のほか、公判中の見聞や所感を書きつけた「獄中手記」、山口県長門市の磯部浅一記念館が所蔵していた新公開書簡など、磯部が残した著述を網羅的に収録。同事件研究の第一人者である筒井清忠・帝京大教授は解説で「画期的な小さな『磯部全集』となった」と評している。

 一方、安倍の『昭和動乱の真相』は、終戦時に内務大臣まで上り詰めた警察官僚の立場から、昭和初期の中国赴任時代に始まり、敗戦後にA級戦犯容疑で尋問されるまでの激動期を回顧。二・二六事件については事前の警察側の警戒度合い、鎮圧に際しての軍、憲兵との役割分担など、警備警察の視点から記述されている。

産経新聞
2016年3月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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