室井佑月「ほのぼのすんなよ」 突然作中に現れ、小説の終わりを宣言する「筆者」の存在

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 作家の室井佑月さん(46)が3月10日に放送された「林修・世界の名著」に出演し、文豪・志賀直哉の「小僧の神様」(『小僧の神様・城の崎にて』[新潮社]に収録)を紹介した。「小説の神さま」と呼ばれる志賀直哉から室井さんが学んだ小説の書き方が明かされた。

■芥川も憧れた志賀の簡潔な文章

 室井さんは志賀直哉の好きなところを問われ、「センテンスが短くて文章が読みやすい」と答えた。芥川龍之介も志賀の簡潔な文章に憧れ、夏目漱石にどうやったら志賀のような文章が書けるのでしょう、と相談していたと番組MCの林修先生(50)が紹介した。室井さんは同作を小学校の頃、中学校の頃と何度となく授業で読んできたが、なんとも思わなかったと明かす。しかし小説家になろうと志した時、その素晴らしさに気付いたという。そして何度も志賀の文章をパソコンで書き写し、文章修業をしたと語った。ちなみに林先生も以前小説家になりたかったことがあり、三島由紀夫の文章を写していたと明かされた。

■作中に現れる筆者

 室井さんにとって小説を書くということは「小さな地球を作りあげる」ことだと論を展開。室井さんが「1万年経った」と書けばその世界では1万年が経過する。「人が(ナイフ等で)刺される1秒程度の瞬間でも原稿用紙30枚を使いゆっくり書くこともできる」と話した。林先生は「神のように俯瞰してみているんですね」と解説した。そして室井さんの好きな「小僧の神様」では作品の最後に唐突に「筆者」が登場することに言及した。「作者は此処で筆を擱(お)く事にする。」と唐突に現れ、作品の終わりを宣言する「筆者」の存在。小説内の登場人物「小僧」に対し冷たい視線の「貴族院議員A」が登場するが、さらにそこに「筆者」が上の視点で登場してしまう。そこに室井さんは感銘を受けたという。「感情移入をして読めば読むほど突き放される。ほのぼのすんなよと言われているようだ」と同作のクールな魅力について語った。

 「林修・世界の名著」はBS-TBSにて毎週木曜日よる11:00から放送中。

Book Bang編集部
2016年3月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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