高橋源一郎さんが語る 震災の「あの日」を忘れずにいるためには

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 震災から5年、今年は節目の年と語る人も多く、「あの日」のことに一区切りつけたい、と考える方も多いだろう。しかしあえて「あの日」を覚えておこう、と語る作家がいる。11日NHKラジオ第1の「すっぴん!」で番組MCの作家・高橋源一郎さん(65)が震災のあったあの日、自分がどう過ごし何を考えていたのか、個人的な経験と感じたことを覚えておくことが大事だと語った。

■Let’s Go! いいことあるさ

 この日の放送で高橋さんは自身の著書『「あの日」からぼくが考えている「正しさ」について』(河出書房新社)の中から、2011年3月10日から11日について書いた部分を朗読した。10日の夜は明日に迫った長男の卒園式のことを考えながら「3月10日は東京大空襲の日だったな」と考えながら眠ったという。そして11日、卒園式に出席し、園児達の歌う『Let’s Goいいことあるさ』(SUPER P-kies)を聞いた。「Let’s Go! 飛び出そう Let’s Go! いいことあるさ」との歌詞を聞き、ずっと歌っていたかった、と述べるほど高橋さんはその歌を気にいり、口ずさんでいたという。卒園式が終わり、午後2時46分、大きな揺れが起こった時高橋さんは「ついに来たか」と考えた。大きな揺れが来るたびにマンションの中庭に逃げ、そのたびに同じマンション住人のOさんと世間話をしたという。その夜子供たちは「震災ハイ」とでもいうような状態になり、なかなか眠りにつかなかった。そこで高橋さんは昼間に聞いた『Let’s Goいいことあるさ』をいっしょに歌った。「Let’s Go! 今度こそ Let’s Go! いいことあるさ」と小声で歌っているうちに、いつしか眠りについたと同書では述べている。

■「あの日」を覚えておくためには

 高橋さんは「あの日」は色々なことを考えるきっかけになったと語った。しかし記憶は薄れる。人間は忘れやすい。だから上述のような個人的な経験を大事にして、そこを覚えておくことによって、そこから考えると当時の感情が思い出せる、と「記憶と感情のしまい方」を提案した。震災の記憶は徐々に薄れゆく中、忘れてはいけないこともたくさんある。高橋さんの提案はそのヒントとなるだろう。

「すっぴん!」はNHKラジオ第1放送にて月曜から金曜8:05から日替わりのパーソナリティーで放送中。高橋源一郎さんは金曜日を担当している。

Book Bang編集部
2016年3月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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