【手帖】ふるさとの記憶と未来のために創刊された雑誌「石巻学」

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 ふるさとの記憶と未来のために創刊された雑誌「石巻学」 東北有数の港町として知られる宮城県石巻市は、5年前の東日本大震災で甚大な被害を受けた。まだまだ復興途上にある中、土地の記憶を刻むとともに、未来へ向けて少しでも多くの人に地域の文化を伝えていこうと、昨年末に創刊された雑誌「石巻学」を紹介したい。

 発行元は、横浜市在住のサーカスプロデューサー、大島幹雄さん(62)が代表を務める「石巻学プロジェクト」。学習院大学教授の赤坂憲雄さん、仙台大学教授の高成田享さんらがメンバーとなり、128ページ、税抜き1500円、1300部でスタートした。

 石巻生まれ、仙台育ちの大島さんは、江戸時代にロシアに漂着し、世界一周して帰還した石巻の千石船、若宮丸の漂流民への興味から、ふるさとのことを調べるようになった。そんな中で大震災が起きた。石巻のために何か自分にできることはないか-。足しげく通ってさまざまな人と会話を交わすうちに、雑誌という形で土地の魅力を幅広く伝えられるのではと考えた。

 一昨年の暮れから準備にかかり、石巻市芸術文化振興財団理事長の阿部和夫さんや石巻千石船の会会長の辺見清二さんら、石巻ゆかりの人にインタビューを重ねた。創刊号は、これらのインタビュー記事に加え、ノンフィクション作家の芦原伸さん、怪談作家の黒木あるじさんらの寄稿、さらに大島さんの筆による津波で消えた映画館、岡田劇場の連載ルポなど、多彩な内容となっている。

 仕事のかたわらでの作業に時間がかかってしまったが、雑誌を作ったことで「本当に自分のふるさとになった気がする」と打ち明ける。「あちこちから人が集まってきた街で、誰に対してもオープンで懐が深いんです。『おもしろかったよ』と電話がかかってくることもあるし、これが縁でお酒を飲んだ人もいる。少しでもふるさとのお手伝いができたらという気持ちですね」と大島さん。第2号は8月の川開き祭りのころには出したい、と意欲を見せている。(藤井克郎)

産経新聞
2016年3月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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