【児童書】『真田十勇士3 激闘、大坂の陣』小前亮著
[レビュアー] 産経新聞社
■胸打つ登場人物の心意気
真田幸村がどれほど名将であっても、その家臣がスゴ腕ぞろいでも、知略の限りを尽くしても、徳川家康の首はとれない。豊臣家は滅びる。わかっていて読むのだけれど、やっぱり悔しくて悔しくて。
昨年秋から、第1巻「参上、猿飛佐助」、第2巻「決起、真田幸村」と刊行されてきた冒険活劇が全3巻で完結した。ルビ入りで「小学校5、6年生から」を対象年齢としているが、大人も一緒に楽しめる。
幕開けは、猿飛佐助の忍術修行。霧隠才蔵、海野六郎、望月六郎、三好晴海、三好伊佐、筧十蔵、穴山小助、根津甚八、由利鎌之介。おなじみ十勇士の痛快なエピソードが次々に展開する。紀州・九度山村での雌伏の時を経て、最終巻ではいよいよ最終決戦を迎える。
〈「どのみち、後のない戦だ。我らの覚悟を、敵味方に見せてくれよう」/幸村の言葉に、将兵はふるいたった〉
過酷な状況にもくじけることなく、熱く生き抜こうとする登場人物の心意気が胸に響く。(小峰書店・1400円+税)著