林修先生「誰が悪いか、僕でしょ!」肥満児だった過去を自己責任だと振りかえる

テレビ・ラジオで取り上げられた本

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 林修先生(50)が著名人を招き、その人の人生に影響を与えた名著を紹介する番組「林修・世界の名著」。3月24日の放送では林先生が感銘を受けた本を著名人に読んでもらうという、いつもとは逆の企画が行われた。林先生が用意した本は『人間の絆』サマセット・モーム[著](新潮社)。この本を読んでもらうために指名したのは芥川賞作家で立教大学准教授でもある小野正嗣さん(46)。林先生の過去が赤裸々に明かされた放送となった。

■林先生が20回読みかえした本

『人間の絆』は生まれつき障害を持ち9歳で孤児となった主人公フィリップが様々な葛藤を抱えながら成長する姿を描いた教養小説。自らも孤児だった著者モームの自伝的作品だ。林先生はこの作品を20回以上は読んだという。まさに林先生にとってバイブルとも言える。しかしどこがそんなに面白いのか、再度読み返して検証したいと思っていたが、巻き添えにするのは高いレベルで文学的な理解ができる人がよいと考え、小野さんを指名したと明かされた。

■小説の登場人物は生き続ける

 小野さんは「前半は辛い境遇の少年の成長過程が描かれる。学校のシーンは皆経験してるので、いじめや友人関係の悩みなど、非常に今日的な物語として読めた」と同作を評価。林先生もこの作品は人間カタログだと思ったと語り、物語の登場人物を周囲の人物に当てはめてみせた。なかでも主人公を翻弄する女性ミルドレッドについて、僕は現実にミルドレッドに会ったんですよ、と奔放で自己中心的な女性との交際を明かした。そしてこの本を読んでいたから彼女に人生を狂わされずに済んだと語り、それも文学の効用ですね、と述べた。それを受け小野さんは「先生のように小説の中にいる架空の登場人物を現実の人に当てはめる人がいるからこそ、小説の登場人物は生き続けられる。人の口に上り、小説の世界を出て生き続けられる。林先生は理想的な読者だと思う」と小説の楽しみ方を語った。

■誰が悪いのか、僕でしょ!

 また林先生は主人公同様に自分も子供時代コンプレックスというほどのものではないが、デブでしたから、と肥満児だったことも明かした。しかしそれも「誰が悪いか、僕でしょ!」と先生の名言「今でしょ!」に掛けて自分の責任だと思っていたと笑った。

■暗い朝から陽が輝くまでのシンプルな物語

 主人公は物語の中で各地を流転し、幸福と不幸を繰り返す。そして生も無意味、死も無意味だと気づく。今を生きて、織りあげるように人生を紡いでゆけばよいのだと悟る。林先生は物語の冒頭「くらい灰色の朝が明けた」とはじまり、最後は「陽が、美しく、輝いていた」とおわることを紹介し、このあいだ(朝から昼まで)を埋めるだけの物語なんですよ、という。小野さんは物語の構造を円環構造だと指摘。物語のはじめに父と母を失った主人公だが、父親と同じ職業に就くことで父を取り戻し、母のような母性を持つ女性と結婚することで母を取り戻す、と解説した。林先生はこうしてみると多数の登場人物があらわれ、起伏のある物語ではあるが、その円環を踏まえると、人生はシンプルだと教えてくれるようだ、と改めて同書の魅力を確認していた。

 「林修・世界の名著」はBS-TBSにて毎週木曜日よる11:00から放送中。

Book Bang編集部
2016年3月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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