「桶川ストーカー殺人事件」の真相を追求した報道記者 「栃木小1女児殺害事件」の自白映像に異論

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 大竹まことさん(66)が司会を務める文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ!」のコーナー「大竹メインディッシュ」(3月28日放送回)にジャーナリストの清水潔さんが出演。栃木県今市市小1女児殺害事件の裁判について言及し、取り調べの一部可視化ではどういう取り調べだったのかわからない、と自白映像の信用性に疑問を呈した。

■社会を大きく動かした調査報道

 清水さんは新潮社「フォーカス」の記者だった1999年、「桶川ストーカー殺人事件」を取材。丹念な調査により警察よりも早く犯人を割り出した。また2009年に冤罪が証明された「足利事件」では、捜査の矛盾を報道し続け、DNA再鑑定への道筋をつけた人物。昨年夏に上梓した『騙されてたまるか 調査報道の裏側』(新潮社)では壮絶な記者人生のなかで掴んだ“真実”に迫るプロセスを公開し、大きな話題を呼んだ。

■見せられないということは……

 番組では清水さんがこれまで見てきた警察の隠蔽体質について語られた後、栃木小1女児殺害事件の裁判に話は及んだ。清水さんは同裁判を一部傍聴しているという。この事件は物証に乏しく、自白の任意性が最大の争点となっている裁判だ。清水さんは裁判で取り調べの映像が公開されたが、公開されたのはあくまで一部だと主張した。取り調べの全面可視化ではなく、仮に(今回の裁判がそうというわけではなく)任意の事情聴取の段階で脅されていた場合など一切記録されない。調書を取るような段階になってはじめて撮ったものが開示されているだけだ、と自白映像の不備を指摘した。そのうえで「一番最初から、ずっと撮っていかないと。特に任意の事情聴取あたりが大事。そのあたりでいくら否定していても、どういう取り調べが行われたのかわからない。一部可視化ではなく、きちんとやってほしいですね」と全面可視化の必要性を訴えた。そして取り調べの一部だけを映像として提出している現在の裁判について「僕に言わせれば、見せられないということは相当変なんでしょ、と思っている」と不信感をあらわにした。

■特定秘密保護法で取材に制約は?

 司会の大竹さんが、特定秘密保護法の施行で取材の不自由さを感じますか、と質問。それに対し清水さんは「ないほうが良いにきまっている。実際に制約も出てきてる。それでもやる奴はやります。報じられたくない方は徹底的にやってきます。そこを『はいそうですね』と丸く収めるのは記者クラブだけ。僕らは元々何もないわけだから、びくびくする必要はまったくない」と独自のやり方で調査報道を推し進めてきた清水さんの記者としての矜持が示された。

 「大竹まこと ゴールデンラジオ!」は文化放送にて月曜から金曜午後1時から放送中。

Book Bang編集部
2016年4月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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