『半熟アナ』
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【聞きたい。】「襟を正すため本を書いた」 トライ&エラー繰り返し飾らずにつづる 狩野恵里アナ著『半熟アナ』
[文] 永井優子
「アナウンサーとして『完熟』しているわけではないが『未熟』だと甘えすぎ、だから発展途上の『半熟アナ』。それに、半熟卵は好きな人は好きだから。みんなに好かれる『王道のアナウンサー』は目指さない。小人数でも好きな人たちに見てもらえれば」
人気番組「モヤモヤさまぁ~ず2」などを担当するテレビ東京アナウンサーの初エッセー。小学校6年から5年間過ごしたアメリカ生活で学んだもの、言葉とコミュニケーションに興味を抱いた大学生時代、アナウンサー試験、新人時代の苦闘から「モヤさま」の現場に至るまで、トライ&エラーの日々が、飾らない筆致でつづられている。
「入社後2年間は仕事がうまくいかなくて。悩んでいたときに先輩や周囲の方々からアドバイスしていただいた“言葉”に重点を置いて書いてみました」
3年前、「モヤさま」に抜擢(ばってき)されたときには、社内でも「狩野って誰?」と言われるほど地味な存在だったという。苦闘の日々に著者を勇気づけた言葉の数々は、不安を抱える新人社員はもちろん、働く者なら胸にしみ入るものだろう。
「何がわからないかを伝えるのも新人の役目。先輩は後輩に聞かれることがうれしいときもある」「自分が気にするほど誰も見ていないが、誰かは必ず見ているものだ」
同期や先輩と比較してあせり、もがくさまはどの職業も共通だが、人気商売ゆえ、それが世間の目にもさらし出されてしまう。
「視聴者からは画面に映っているときしか見えないが、実際は事前取材や下調べの時間が9割。不思議な職業だなぁと思いますね」
後輩にアドバイスのバトンをつなぐ立場になってきたが、「疲れを理由に挨拶の声が小さくなってしまったり、厳しい言葉を掛けられず穏便にすまそうとしたり。私自身、襟を正すためにも、本を書いたという感じです」。(KADOKAWA・1200円+税)
永井優子
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【プロフィル】狩野恵里
かのう・えり 昭和61年、東京都生まれ。国際基督教大卒。平成21年、テレビ東京にアナウンサーとして入社。25年4月から「モヤモヤさまぁ~ず2」、他に「ネオスポ」などを担当。