【手帖】平凡社の「スタンダード・ブックス」が好評

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 平凡社が昨年末に刊行を始めた、科学と文学を横断する知性を持った科学者・作家を1人1冊で紹介する随筆シリーズ「STANDARD BOOKS」が好評だ。これまでに『寺田寅彦 科学者とあたま』『岡潔 数学を志す人に』『野尻抱影 星は周る』『中谷宇吉郎 雪を作る話』『牧野富太郎 なぜ花は匂うか』の5冊が刊行され、以後、串田孫一、稲垣足穂、朝永振一郎が登場する予定だ。

 それぞれの著者にふさわしい装丁が施された小ぶりなB6変型判。総ページ数は200ページちょっと。この中に編集者が精選した随筆、著者をより身近に感じられるように工夫して書かれたプロフィル、その著者についてさらに知りたい読者のためのブックガイドが収められ、著者を愛する作家によるエッセーのつづられた栞(しおり)が挟み込まれている。

550『野尻抱影 星は周る』『中谷宇吉郎 雪を作る話』『牧野富太郎 なぜ花は匂うか』

 「情報が氾濫する何でもありの世の中というのは、自由に見えてじつはすごく不自由だと思います。考える足がかり、暗闇の中を歩くための懐中電灯を提供できないだろうかとこのシリーズを始めました」

 担当編集者の岸本洋和さんは刊行の意図を説明する。一昨年に出た高野文子さんのマンガ『ドミトリーともきんす』(中央公論新社)が世の中に受け入れられたことにも後押しされた。『ドミトリーともきんす』は若き朝永振一郎、牧野富太郎、中谷宇吉郎、湯川秀樹が暮らす学生寮を舞台に、若い寮母親子が彼らの残した言葉をゆったりと読み解いてゆく作品。

 「科学者の書いた随筆は論理的で、読むと頭が涼しくなり、私たちが自分で考えるための補助線としやすいと思います」

 初刷りは3500から4000部。『岡潔』はすぐに重版が決まり、そのほかも重版が見えてきたという。

 「『岡潔』の売れ行きがもっともよかったというのは、正直なところ意外でした。それもビジネスマンが手に取っている。混沌(こんとん)とした時代だからこそ、岡の言葉が求められているのでしょうね」

 第1期は8巻で完結するが、第2期の刊行も検討中という。

産経新聞
2016年4月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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