【話題の本】『AIの衝撃 人工知能は人類の敵か』小林雅一著

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AIの衝撃 : 人工知能は人類の敵か

『AIの衝撃 : 人工知能は人類の敵か』

著者
小林, 雅一, 1963-
出版社
講談社
ISBN
9784062883078
価格
880円(税込)

書籍情報:openBD

【話題の本】『AIの衝撃 人工知能は人類の敵か』小林雅一著

[レビュアー] 海老沢類(産経新聞社)

■人間の「最後の砦」とは?

 コンピューターの囲碁ソフトが世界のトップ棋士を破り、自動運転車をめぐるニュースも増えてきた。そんな人工知能(AI)の可能性を、ITの専門家が解き明かす。発売は昨年3月だが、ブームにも乗って9刷3万部に達した。

 パソコンの基本ソフトやモバイル技術など、日本メーカーには技術革新の波に乗り遅れてきた苦い記憶がある。〈今から30年後に、現在を振り返ったとき、まさに当時のパソコンやインターネットに匹敵する技術が、今の「AI」と「次世代ロボット」〉。自ら学んで賢くなる「ディープラーニング(深層学習)」技術をはじめとするAIの進化は、ネット上の膨大な情報を使った新たなビジネスを生み、少子化による人手不足を解消する可能性がある。一方で、雇用破壊による軋轢(あつれき)が予想されるし、技術が悪用される懸念も拭えない。功罪を押さえつつ、劇的な進化の背景にある脳科学の蓄積も説き起こす。

 「かみ砕いた説明と内容の濃さを併せ持つ」(担当編集者)のが魅力。AIが浸透する社会で、人間の「最後の砦(とりで)」とは? 著者の答えには意外性がある。過度な楽観論や脅威論とは一線を画すバランスのとれた筆致が光る。(講談社現代新書・ 800円+税)

 海老沢類

産経新聞
2016年4月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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