【写真集】『ＢＡＣＯＮ　ＩＣＥ　ＣＲＥＡＭ』奥山由之　独特の美意識で見た世界

　陽光を反射するぬれた道路、あかね色の雲、オムライスを食べかける少年の後ろ姿、牧場の羊…。一枚一枚のイメージは断片的だけど、どこか関連しているようでもある。ページを繰るのが楽しいのは、セレクトの妙だろう。時々モノクロが挿入されたり、クローズアップがあったり。具象、抽象、ブレ、アナログ、デジタル…変幻自在。行き先不明のジェットコースターに乗ったみたいだ。

　第４７回講談社出版文化賞写真賞を受けた奥山由之氏の受賞対象作。日常的な空間で写されているが、おだやかさや安心感ではなく、落ちつかなさや刺激のほうが強い。独特の美意識で世界を再構成している。

　どういう場面を写したとか、写っている人が何をしているとか、写真の意味性をなるべく考えないようにしたら（この写真集をながめていると、どんどんそういう気分になるのだけれど）、そこに残るのは、図像の秘めた純粋な力。色彩や形態や躍動感は、それ単体でもけっこう心を揺さぶってくるものなのだ。写真って面白いなあ。（ＰＡＲＣＯ出版・２８００円＋税）（存）

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