「大学はいつでも行ける」30代で大学に入学した女優の中江有里が「学び」について語る

テレビ・ラジオで取り上げられた本

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 5月11日放送のNHK総合「ひるまえほっと」に女優で作家・書評家としても知られる中江有里さんが出演し、月に一度の「ブックレビュー」コーナーで3冊の本を紹介した。

 この日中江さんが紹介したのは、いずれも「学び」をテーマにした3冊。

大きくなる日』佐川光晴 [著](集英社)
「文系学部廃止」の衝撃』吉見俊哉[著](集英社)
これで駄目なら 若い君たちへ 卒業式講演集』カート・ヴォネガット[著](飛鳥新社)

■感動的な成長物語

『大きくなる日』は4人家族の横山家の歩みを、友人や同級生、先生など、周りの人々の姿を交えて描いた連作短編小説。なにげない日常の中で、人々が少しずつ成長してゆく姿を綴った心温まる作品。中江さんは著者の佐川氏を作家でありながら家事もこなす主夫であるため、家庭のなかの些細な出来事や、子どもの気持ちなどをすくい取るのが上手な作家だと評した。短編9つの物語は横山家の長男が保育園を卒園するところからはじまり、中学校を卒業するまでを描く。毎回主人公は変わり、横山家や周囲の人々も大きく成長してゆく様子が描かれる。

 2013年に子どもが生まれたばかりの島津有理子アナウンサー(42)は「これから子育てをするので、未来予想図を見ているような感じでした」と感想を述べた。中江さんは「自分の思春期の頃を思い出す。3歳の頃にお母さんを無くした後輩の良子ちゃんのエピソードには、我がことのように感じ泣いてしまった」と告白した。そして子どもが成長の過程で「“勉強”ではなく“大きくなる”ために学ぶとはこういうことなんだ」と同書の魅力を語った。

■大学では何を学ぶべきなのか?

『「文系学部廃止」の衝撃』は大学論の第一人者が大学の在り方や、今後の大学改革の方向性を提言した一冊。去年6月、国立大学の改革について文部科学省が出したある通知をきっかけに起きた文系学部廃止論争。中江さんは「世間で理系は役に立つ、文系は役に立たないけどなんか価値があるみたいなイメージを持たれがちなんですけども、本当にそうなのか? そして文系の価値とはなんなのかということをひもときたいと思って手に取った一冊」と同書を読むきっかけを語った。著者は理系はわかりやすい目的があり、それを達成することである種数値化された“役に立つ”があると述べる。しかし文系は自分でものを考える力を養い、価値を創造することに“役に立つ”のだ、とその違いを述べている。

 同書では人生の転機に大学を置いてみるということが提言される。日本では25歳以上の大学入学者数は全入学者のなかで約2%。諸外国の平均は約20%。自身も30代になってから大学に入ったという中江さんは、10代の頃より学びたいことがはっきりしているという。そして大学をいつでも行ける学びの場として捉え、知識を身につけるだけではなく、教養やものを考える力を身につける場所だと考え直すための一冊になった、と同書の提言に賛同を示した。

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■これで駄目なら、どうしろって?

『これで駄目なら』は現代アメリカ文学を代表する作家、カート・ヴォネガットが、大学の卒業式などで講演したユニークな9つのスピーチをまとめた一冊。カート・ヴォネガットは様々な職業を経て、47歳にして作家として名声を得た遅咲きの作家。中江さんは「豊富な人生経験から物事を捉える角度が様々で興味深い。卒業式の祝辞と言うとかしこまったものかと思っていたが、ユーモアと意外性の連続で、この次何を言い出すんだろう」と機知に富んだスピーチだと絶賛した。

 タイトルの「これで駄目なら」の後には「どうしろって?」と続くという。日々の暮らしが幸せだと自覚し、足りないものに目を向けるのではなく、「これで駄目なら、どうしろって?」と自分に問いかけろとヴォネガットは説いている。また中江さんは同書の訳についても「訳者は芥川賞作家の円城塔さん。リズミカルで素敵な訳で、カート・ヴォネガットの語りが蘇るようだ」と高く評価した。

■本は身近な「学び」の場

 今回取り上げたのは「学び」の3冊。中江さんは「知識ではなく自分で考えるか、どう理解するかということを、読みながら非常に考えさせられた。本は一番身近にある学びの場所なので、自分が何か知りたい、なんだろうこれはって思ったときに、ぜひ書店に足を運んで、自分の興味のある本を手に取って、一冊でも読んでもらえたらいいなと思います」と締めくくった。

ひるまえほっと」はNHK総合で月曜から金曜11:05からの放送。「ブックレビュー」コーナーは月に一度放送される。

Book Bang編集部

Book Bang編集部
2016年5月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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