妻が処女じゃなかったと嘆く夫が「処女の妾をとる」と宣言 やめさせることはできるのか?

テレビ・ラジオで取り上げられた本

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 作家の高橋源一郎(65)さんが、司会を務めるNHKラジオ第1の「すっぴん!」(5月13日放送回)のコーナー「源ちゃんのゲンダイ国語」で『大正時代の身の上相談』カタログハウス[編](筑摩書房)が取り上げられた。番組パートナーの藤井彩子アナウンサー(46)が100年前の価値観に驚き、怒りをあらわした放送となった。

■公開身の上相談の端緒

『大正時代の身の上相談』は大正3年(1914年)から11年(1922年)発行の読売新聞の人生相談コーナーから抜粋したもの。同コーナーが公開身の上相談の端緒との説もある。旧仮名づかいは直されてはいるものの、質問や答えはそのまま。「清く正しき乙女の困惑」「あどけなき少年の苦悩」「道ならぬ恋の悶え」などのコーナーに分けられた129の相談が掲載されている。

■キスをされたら穢れるのか?

 番組では高橋さんによりいくつかの相談が読み上げられた。

「接吻されて穢れたわたし」許嫁のある身で他の男性にキスをされた女性の悩み。接吻されたことで自分は穢れたのかと悩み、一生独身で過ごそうか、許嫁に許しを乞おうかと煩悶する。それに対し読売新聞記者は「気に病むことはないが、どうしても気になるなら笑い話として許嫁に打ち明けてみてはどうか。その清い乙女心を一生失わないでほしい」と回答。これがこの時代のスタンダードな価値観だと高橋さんは解説した。

■顔は醜い「が」心は美しい女

「顔は醜いが心の美しい女」次は結婚問題に悩む男性の相談。男性は容姿の悪い女性看護師を愛してしまう。しかしその言い草がひどい。「容姿が良くないのに似ず」綺麗な心を持っていると彼女を評価。しかし結婚に踏み切るかどうかを迷っているとの悩み。藤井アナウンサーは「顔は醜い『が』とか『容姿に似ず』とかそう思うのは良くないですよ」と相談者に怒りをあらわす。そして回答を寄せた記者の「容姿が良くないのに結婚を考えることに感心します」との答えにも「モヤモヤするなあ」とイライラをあらわしていた。

 高橋さんは「全体的に男の人が上から目線で驚く」と当時の男尊女卑の価値観がよくわかると解説した。

■処女の妾を置くから承知せよ!

「処女じゃないと嘆く夫」4人の子供をもうけた夫に過去の男性関係を知られた妻の悩み。その夫は結婚時に妻が処女でなかったことに怒り、「俺は処女を知らない。男と生まれて生きがいもない。処女を妾として置くから公然と承知せよ!」とのたまうという。これに対しても藤井アナウンサーは「なにい?!どういうこと」と怒りをあらわす。さらに記者の答えも、処女と信じて結婚し、処女でなかったことを知ったあなたの夫には同情せずにはいられません。あなたはもっと身を責め、夫の許しを乞わなければなりません。妾をとることを拒絶することはできません、との現代からみれば信じられない回答。

 高橋さんは「大正時代ってそんな時代だったんだねえ。大正リベラリズムとか言ってるけど、こんなのばっかりなんだよね。質問する方も回答する方もおかしい。いやあ、今は良かったね」とまがりなりにも男女平等が進む世の中に安堵の言葉を述べた。

「すっぴん!」はNHKラジオ第1放送にて月曜から金曜8:05から日替わりのパーソナリティーで放送中。高橋源一郎さんは金曜日を担当している。「源ちゃんのゲンダイ国語」のコーナーはNHKラジオ第1のウェブサイトのポッドキャストのページ(http://www.nhk.or.jp/suppin/podcast.html)で聞くこともできる。

BookBang編集部

Book Bang編集部
2016年5月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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