話題の三島賞・蓮實重彦会見 “先輩”三島賞作家二人が「最高でした!」
テレビ・ラジオで取り上げられた本
作家の高橋源一郎さん(65)が、司会を務めるNHKラジオ第1の「すっぴん!」に5月20日、小説家・音楽家の中原昌也さん(45)が出演した。アナーキーな受け答えに終始する中原さんを、昼間の番組に起用したNHKの懐の深さを感じさせる放送となった。
■ドゥマゴ文学賞に金銭授受疑惑?
高橋さんは中原さんが『中原昌也 作業日誌 2004→2007』(boid)でドゥマゴ文学賞を受賞した際の選考委員だった。この賞は選考委員一人が受賞者を決める。中原さんは「40万ぐらいあげましたよね」と高橋さんに賄賂を渡していたかのような口ぶり。もちろん中原さん流のジョークだが、藤井彩子アナウンサー(46)は「冗談が冗談に聞こえない」とたしなめていた。
■話題の蓮實会見について
番組では中原さんの自伝『死んでも何も残さない―中原昌也 自伝―』(新潮社)に触れた。同書には子どもの頃はSF小説が好きだったと書かれているため、藤井アナにそう聞かれると「好きじゃないですよ、基本的には何も好きじゃない」とつれない答え。その後も藤井アナの質問をのらりくらりとかわす中原さんに、高橋さんは5月16日三島由紀夫賞を受賞した蓮實重彦さん(80)の会見を重ね合わせて言及した。
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- 死んでも何も残さない
- 価格:1,540円(税込)
蓮實さんの会見とは、三島賞の受賞式でお決まりの質問を用意して来た報道陣に「馬鹿な質問はやめていただけますか」や「個人的なことなので申しあげません」と厳しい答えで臨み、その「ある種大人げない、ある種真っ当な」対応が大きな話題となった会見。
会見の様子を知った高橋さんは自身のTwitterで「蓮實さんの三島賞受賞記者会見での発言を読んだ。受賞したら絶対いうだろうなあと思っていたことをみんなしゃべっていて、爆笑」と反応している。
高橋さんは今回の放送でも「超正直でしたよね。なかなか見事な受け答え」と述べると、中原さんも「最高でしたよね!」と絶賛。高橋さんはマスコミの用意してくる予定調和の会見に「蓮實さんは真面目なので(やらせを)やらない。本当に思っている事だけを言うと嫌われる」と述べ、さらに「誰かが誰かに賞をあげるというのは文学と関係ないでしょ。作品だけ読めばいいのにああいうことを麗々しくね。かっこよくないねと言っているわけで」と蓮實さんの対応を賞賛した。
実は高橋さん、中原さんともに三島由紀夫賞を受賞しており、二人は蓮實さんの“先輩”になったと笑う。そしてその蓮實さんの『伯爵夫人』(夏に新潮社から発売予定)の帯(本に巻かれている宣伝文句)を中原さんは任されているという。中原さんは「まだ読んでいないんですけどね」と相変わらずの答えだった。
■オリンピックのためなら賄賂受け取ったっていい
中原さんの音楽活動についても触れられた。こちらでも高校時代にはじめたノイズミュージックで「国家転覆を目指していた」や「デビューのきっかけはなんかやってたら適当に、その辺は察してください」「ファンの意見は一番信頼できません、無視です」と散々な答え。そしてコーネリアスや布袋寅泰、スチャダラパーらと共演や楽曲提供もあると紹介され、依頼されたら断らないんですか? と藤井アナに問われると「ギャラの問題。とにかくカネですよ、日本では。捕まらなきゃ何やってもいいんですよ。オリンピックのためなら別に賄賂受け取ったっていいんですよ」ときつい冗談を繰り返した。
■だったらお前が書け
また小説を書き始めたきっかけを問われ、映画批評などを書いていたら細かい事実関係の間違いなどを指摘されて嫌になったと述べた。そして小説を書きだすもこちらでも「一階にいた人物が二階にいるとかうるせえことを言われ」と出版社の校閲に文句をつける。「基本的にありもしないこと書いてるんだから勝手にさせろや。だったらお前が書け」と思っていると冗談交じりに皮肉った。そんな中原さんに出会ったころの高橋さんは、「本当の天才だと思って、頑張って書けといつも言っていた」と二人の交流が明かされた。
中原さんは5月23日の同番組のコーナー「MUSIC SCRAP」にも出演の予定だ。
「すっぴん!」はNHKラジオ第1放送にて月曜から金曜8:05から日替わりのパーソナリティーで放送中。高橋源一郎さんは金曜日を担当している。またこの日のコーナー「源ちゃんのゲンダイ国語」では『そこにシワがあるから──エクストリーム・アイロニング奮闘記』松澤等[著](早川書房)がとりあげられた。
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