『巨大アートビジネスの裏側 誰がムンクの「叫び」を96億円で落札したのか』
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【話題の本】生き馬の目を抜く競争描く 『巨大アートビジネスの裏側』石坂泰章著
[レビュアー] 黒沢綾子
つい最近、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」の運営会社社長、前澤友作氏(40)が競売大手クリスティーズのオークションで、米画家ジャンミシェル・バスキアの絵画を約5728万ドル(約62億円)で落札し話題になった。バスキア作品としては過去最高の落札額。しかも、リチャード・プリンス(米)ら現代の重要作家の作品も次々に競り落とし、計4点で落札総額約88億円というから驚く。
前澤氏は公益財団法人「現代芸術振興財団」を4年前に創設、数年内に故郷の千葉県内に美術館を開く予定という。この本の著者は同財団の評議員を務め、コレクション形成へ助言しているそうだ。そもそも著者は競売大手、サザビーズジャパン前社長で、アートビジネスを知り尽くす目利き。本書では、巨大化し続けるアート市場の舞台裏を紹介している。
中国や中近東など新興国の収集家が、主要オークションの約3割を落札するという昨今において、日本の若き億万長者が存在感を示しているのは明るい話題なのかも。少なくとも、政治資金で数万円の美術品を買いあさるどこかの知事よりは、文化貢献につながるだろう。(文春新書・830円+税)
黒沢綾子