空前の自撮りブームである。なぜ人は自分を撮りたがるのか。著者は1839年の写真の発明とほぼ同時に生まれたポートレートの歴史をたどりながら、人が自分の写真に託してきた夢や思いを読み解いてゆく。
現代の女子高生を中心とした自撮り、プリクラ、コスプレ写真のブームは、流動化した社会のなかで《身近な友人たちとともに共有している執行猶予的な現在を実感し、かたちとして残しておきたいという願望》によるもので、《先の見えない時代を必死に生きていこうとする切実さが込められている》と著者は指摘する。(筑摩書房・920円+税)
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2016年5月22日 掲載
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