小説家デビューした壇蜜「私生活を切り売りして、糸みたいになって死んでゆくんだろうな」

テレビ・ラジオで取り上げられた本

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 壇蜜さん(35)がパーソナリティーを務めるラジオ番組「壇蜜の耳蜜」に5月23日、『羊と鋼の森』(文藝春秋)で2016年本屋大賞を受賞した小説家の宮下奈都さんが出演した。壇蜜さんによる『羊と鋼の森』の感想がたっぷりと語られ、宮下さんが終始感動しっぱなしの放送となった。

■福井から日帰り

 宮下さんは福井在住。この番組に出演するためだけに東京にやってきて、この日のうちに福井に帰るという。壇蜜さんに以前から会いたかったという宮下さんは番組中、終始壇蜜さんのことを「嬉しい。可愛い」と愛でながら喜びをあらわにしていた。

■普遍性のある物語

『羊と鋼の森』を読んだ壇蜜さんは、参加型の小説だ、と感想を述べた。「登場人物の姿形の想像がすごく自分に任されている気がして、自分も想像するという役割をしっかり果たさなければ読めない物語」と壇蜜さん。それは登場人物の姿形だけではない。『羊と鋼の森』はピアノの調律師の話だが曲のタイトルはほとんどでてこない。宮下さんはその理由を「それぞれが自分の頭の中で音楽を鳴らしてもらえたらうれしいなと思って書いたので、そういう風に読んで頂けるのは嬉しいです」と小説に残された余地を壇蜜さんがしっかりと楽しんでいる事を喜んでいた。また様々な職業の人が主人公の働き方に自分を重ねているとも解説され、アシスタントの太田英明アナウンサーは「あらゆる職業の人が共感できる普遍性があるからこれだけ売れてるのかなあ」と分析した。

■感覚を共有できる喜び

 壇蜜さんは同書の中の一番好きな表現として「ミルク紅茶」を濁った川に喩えた場面をあげた。宮下さんは作品のなかで、ミルク紅茶を“美しいもの”として描き、その喩えとして「大雨の後の濁った川」という表現を使っている。壇蜜さんもその感覚がよくわかると述べ「澄んでいるばかりが川や湖のよいところじゃない。濁っているからこそ命がいっぱい入っている可能性があるんだろうな」と共感をあらわすと、宮下さんは「すごい、嬉しい感想を頂いてしまいました。そういう風に感覚を共有できることが読書の喜び」だと嬉しそう語った。そして壇蜜さんの一連の感想を聞き「可愛いだけじゃなく、あんなすばらしい感想を言って頂くことはなかなかない。すごく頭のいい方だなと思った」と評者としての壇蜜さんにも感服していた。

■壇蜜小説家デビュー

 2人の話題は壇蜜さんの小説家デビューにも及んだ。壇蜜さんは21日発売の「オール讀物」(文藝春秋)掲載の「光ラズノナヨ竹」ではじめての小説に挑んだ。番組収録は雑誌の発売前に行われたため、宮下さんは壇蜜さんの小説をまだ読んではいないものの、『壇蜜日記』(文藝春秋)などのエッセイは読んだことがあるという。そして「彼女が一個の作品だと思うので、彼女から出てくるものは小説として成り立つと思う。すごく楽しみです」と壇蜜さんの小説家としての才能に期待を寄せた。壇蜜さんは「自分は楽しく書くことができない。私生活を切り売りして削りながらものを書いて、最終的には糸みたいになって死んでいくんだろうな」と創作の苦しさを語った。

「壇蜜の耳蜜」は文化放送にて毎週月曜19:30から放送中。

BookBang編集部

Book Bang編集部
2016年5月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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