オードリー若林「僕と俺の間の言葉が欲しい」「女性の“ボク”はキツい」鋭い言語感覚に作家も共感

テレビ・ラジオで取り上げられた本

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 お笑いコンビオードリーの若林正恭さん(37)が司会を務めるBSジャパンの番組「ご本、出しときますね?」(6月10日放送回)に小説家の柴崎友香さん(42)と窪美澄さんが出演した。普段は見られない作家2人の本音と若林さんの鋭い言語感覚を感じた貴重な放送となった。

■同期作家はライバルなのか

 窪さんは同番組に以前出演した朝井リョウさん(27)や柚木麻子さん(34)と2010年デビューの同期。同期の作家は気になるものかと若林さんに問われ、「私たちは猜疑心で結びついた3人。仲はいいが、励まし合って仕事をしているというよりは、誰かが賞をとったりすると、ハンカチをキーってやる。涙を流したりとか」とライバル心をむき出しにし合う関係だと明かした。柴崎さんは「そういうのを出し合える関係はいい関係ですよね」とフォロー。しかし窪さんは番組後半では編集者の褒め言葉よりも同期の評価を信用するとも語っており、同期3人の良い関係がうかがえた。

■「僕」と「俺」の間

 作家と若林さんが質問に答えるコーナーでは「言語感覚は他人よりが優れていると思われますか」との窪さんの質問に若林さんが答えた。窪さんの大学生の息子は若林さんの大ファン。若林さんのことを天才だと言っているという。若林さんは「僕と俺の間の言葉が欲しい」との感覚を披露すると、作家の2人も主人公の一人称には悩むと共感。窪さんは平仮名の「あたし」は「桃井かおりさんのような人は出てこない」ので使わないと述べる。柴崎さんは「それがその小説の世界にあっている人もいますよね」と再度フォローした。

 また若林さんは女性の「ボク」は「キツいかもしれない。申し訳ないけどこだわりを感じちゃう。そのこだわりが人づきあいとして難しくなる局面が来るかもしれない」と語ると、柴崎さんは「ボク」を使ったことがあると告白。「ボク」はフィクション感がでるので、小説を書くきっかけになった、と解説した。ただし会話ではなく書き言葉だったため、若林さんは「甘く地雷を踏んじゃったかと思った」と笑っていた。

■俺が楽しくてやっている

 3人が独自のルールを披露するコーナーでは柴崎さんは『「人の為」にやらない』とポリシーを述べた。大義名分を考えて「人の為」になにかをすると、結局出来の良くないものになると反省を込めながら語る。若林さんも「この番組も出版業界のためにありがとうと言われるが、俺が楽しくてやってるし」と作家とのトーク番組を心底楽しんでいることを明かした。また窪さんが「編集者の褒め言葉を信じていない」ことや「内容でなく装丁をやたら褒められると傷つく」や若林さんがファンから自己啓発本を送られることが多く、「ナメんじゃねえよ」と思っているなど、赤裸々なトークが展開された貴重な放送となった。

 番組最後に窪さんは「猜疑心が主題になっているような本」として『村に火をつけ,白痴になれ 伊藤野枝伝』栗原康[著](岩波書店)を「人の目なんて気にしない女性が描かれていて、迷いがある時に読むと元気になる」と紹介した。

「ご本、出しときますね?」は6月24日の放送で第1シーズンが終了の予定。残り2回のゲストは角田光代さん(49)と西加奈子さん(39)。同番組の最新の放送回はBSジャパンのウェブサイト(http://www.bs-j.co.jp/gohon/index.html)でも無料配信されている。

 文筆系トークバラエティ「ご本、出しときますね?」はBSジャパンにて毎週金曜よる11時30分から放送中。

BookBang編集部

Book Bang編集部
2016年6月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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